@睦月来歌 ページ20
「…わかったよ、なってやる」
「ほ、ほんとですか!?」
「嘘ついてどうすんだよ」
えへへ、と笑う少女につられて、俺も笑ってしまう。
自分が今肝試し中なのも忘れて。
…と、まぁ、これが俺とAの出会い。
七月上旬の、ある夏の日のことだった。
*
ーーーー知らなかった、で済ませることができたら、どれだけ楽だったのだろう。
Aと"友だち"になって、一ヶ月が過ぎたある日。
俺は、彼女の"真実"を知ることになる。
「いない…?」
「ええ、ここには清水Aなんて女性はいませんけど?」
嘘だ。
そんなはず、あるわけない。
呆然としていると、神主らしき老人がこちらにやってくるのを見つけた。
その隣には、彼女がいて。
「下がれ」
その言葉で、さっきまで話を聞いていた巫女が立ち去る。
「A、どうして」
その言葉を遮るように、彼女は首を横に振った。
「A。…よいのか?」
「うん、いいの。いつかは言わなきゃいけないことだったから」
細い手が、俺の頬に伸びる。
しかしその手は、俺の頬をすり抜けた。
「…やっぱり、だめかぁ」
悲しげに笑うAの手足は、うっすらと透けていた。
「私ね、生きているけど生きてないの」
「どういう、ことだよ」
「三年前に事故にあってから、私の体の時間は止まったまま。…巫女の血統だからかな、意識だけ体から弾かれてここに縫いつけられちゃった。
だけどね、もう時間がないの。手足が透けてるのがその証拠」
俺は何も言えずに、Aを見つめていた。
彼女はそっと手を下ろして、立ち去ろうとする。
「っ、待てよ!」
気づけば、彼女へ叫んでいた。
「お前は、それでいいのか?助かる方法はないのかよ!」
「ごめんね、くるぶし」
「ーーーーッ」
がつん、と後頭部に衝撃が走る。
どうやら神主に殴られてしまったらしい。
「さよなら…だいすき、だよ」
小さく呟く声。
最後に見えたのは、泣きそうな彼女の顔だった。
あとがきもあります@睦月来歌→←夏の終わり、君との出会い。@睦月来歌
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柚刃@究極自由人(歌い手厨)(プロフ) - お疲れ様でした!!皆さん文章も絵も綺麗でもう…素敵すぎます…!これからも応援してます!(・∀・)ノ (2014年8月18日 20時) (携帯から) (レス) id: ec7f8af196 (このIDを非表示/違反報告)
灰猫ノン@COFあいらびゅー(プロフ) - 豪華コラボ、素敵です!!一人目の美音さんのお話感動しました!!明日の沙羅さん、それ以降の皆さんのも楽しみにしてます!! (2014年8月11日 19時) (レス) id: 87e7464974 (このIDを非表示/違反報告)
白猫ナル(プロフ) - 待ってました!みなさんに期待してます!! (2014年8月11日 14時) (レス) id: 4154c1b447 (このIDを非表示/違反報告)
宇宙音@8/14〜19不在(プロフ) - うわあああすごいコラボ感激です!!現在のトプ画もそらるさん……!!明日からの方にも期待をしつつ (2014年8月11日 13時) (レス) id: f1c54e0922 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - 企画していただき有り難いです。 そして、一人目が美音さんで嬉しいです。 人数が前回より少し少なめなのは内容が一つ一つ濃いからだと信じています笑 美音さん*歌い手の小説も是非頑張ってください。応援しています。 (2014年8月11日 12時) (レス) id: e0bc106fd6 (このIDを非表示/違反報告)
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