第三幕 弐 ページ12
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カァカァと、烏が暢気に鳴いている。たった一羽の黒い影は、飛んで、飛んで、夕陽を溶かした空に吸い込まれて、消えた。
その烏が飛び立ったのは、橙色の公園。鳥打帽を被った男と、茜に染まった女。そして男の視界には、白髪の老夫が立っていた。
「……彼女は、」
「死んだ」
絶対零度の声。綾辻の目の端で、京極は宵闇の空を見上げた。
「……君の異能かの?」
「ああ。……彼女の自白が、最後の証拠だった」
凶器もトリックも、既に解決済であった。けれど、犯人に目星が付けられない。Aが殺したのが、本当に見ず知らずの老人だったからだ。何の接点も無い、無関係な――。
「……彼女には、貴様が見えていた」
綾辻が、囁くように云う。だが、そんな事は有り得ない。何故なら、彼の目に映っている京極夏彦は、綾辻行人の脳にこびりついた、幻だからだ。
「……確かに、見えておったな。儂の声も、聞こえておった」
圧し殺した京極の声が、綾辻の鼓膜を揺らす。無感情に、無感動に、京極は云った。
「有る筈の無い事じゃが……彼女は、君に憑いた憑き物である儂を、確かにその眼に映しておった」
僅かに震えた声。けれど其れを隠すように、京極はぎゅっと拳を握り締めた。
「……儂の所為、じゃの」
ぽつり、呟かれた言の葉。其れは矢張り、夕映えの空に吸い込まれていった。
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ふらり火(プロフ) - あにもーさん» え、あ、ごめん! (2016年8月21日 21時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー - うん、そういうものだと思ってましたです。文がわかりにくくてごめんね (2016年8月21日 20時) (レス) id: 8d0782fc85 (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» いや、『七夕』の話の台詞やらなんやらを一寸変えるだけだよ? (2016年8月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー@NL厨(プロフ) - おぉ!楽しみー! お盆だしね、会いたいよ!!!(誰) (2016年8月20日 21時) (レス) id: a66a974f2e (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» うん、出しちゃおう!( 織田作ね……何としてでも会わせたくて、やっちゃった← (2016年8月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふらり火 | 作成日時:2016年7月20日 17時