第二幕 夢 ページ6
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「のう、A君」
「何ですか、京極さん」
京極さんと逢うようになって、半年は経った頃。何時もは飄々と笑っている彼が、ふと、真剣な面差しで云った。
「儂が犯罪者であったら、君は如何するかね?」
「……犯罪、者……」
何時ぞやの、「もしも逢魔が刻の妖怪だったら」と同じ冗談かとも少し思ったが、声音も表情も真剣その物で、思わず言葉に詰まってしまった。
「そう、犯罪者じゃ。人間の悪と呼ばれる心、感情を煽る……詰まりは犯罪教唆じゃな。儂が、そんな事を繰り返して政府に追われている人間だとしたら、君は如何する?」
考えられなかった。
目の前に居る、少し意地悪な処を除けば只の博識な好々爺である彼が、犯罪教唆? 信じられない。
でも、彼がこんな冗談を云うとも思えない。
だとしたら、彼は犯罪者?
少し間を置いてから、意を決して云った。
「京極さんが犯罪者の顔を持っていても、私には、優しい人の顔しか見えません」
――だから、京極さんが犯罪者でも、私はあなたの事が好きです
そう云ってしまいそうな唇を一旦軽く噛んでから、「それでは、駄目ですか?」と云った。
ちらりと彼の表情を窺うと、それは珍しく、驚きに染まっていた。泥色の目を見開き、私をじっと見詰めて、彼は暫く黙っていた。
「……面白い娘じゃのう、A君は」
「それ、褒めてるんですか、貶してるんですか」
「貶すなどとんでもない。呆れている、と云うのが適切じゃ」
「結局、褒めてもいないじゃないですか」
……私は、犯罪者を好きになっていたようでした。
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ふらり火(プロフ) - あにもーさん» え、あ、ごめん! (2016年8月21日 21時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー - うん、そういうものだと思ってましたです。文がわかりにくくてごめんね (2016年8月21日 20時) (レス) id: 8d0782fc85 (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» いや、『七夕』の話の台詞やらなんやらを一寸変えるだけだよ? (2016年8月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー@NL厨(プロフ) - おぉ!楽しみー! お盆だしね、会いたいよ!!!(誰) (2016年8月20日 21時) (レス) id: a66a974f2e (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» うん、出しちゃおう!( 織田作ね……何としてでも会わせたくて、やっちゃった← (2016年8月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふらり火 | 作成日時:2016年7月20日 17時