検索窓
今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:7,615 hit

幕間 壱 ページ5

.


 洋風のアンティークランプが放つ、気怠げな橙色の中。煙管の煙に溶け込んで、綾辻の視界に妖怪が映り込んだ。


「……何の用だ、京極」


 じんわりと滲み出る殺気。だがそれは、何の意味も為さない。何故なら、凝縮された殺意を一身に受けている男は、もう生きてはいないから。


「そう殺気立つでない」


 そう云って、京極と呼ばれた妖怪は呵々と笑う。ティースプーンが飛んできたが、彼は気にも留めなかった。


「若者は気が短いのう。……まあ好い。今日は、この老い耄れの昔話を聞いて貰いたくての」
「俺は聞きたくない。散れ」
「佳いではないか。どうせ暇なのじゃろう? それに、興味が無い訳では無かろうて」


 図星を指された綾辻は、手に持っていた本を置く。籐椅子に凭れ掛かって完全に聞く体勢に入った彼に、京極は表情を消して問うた。


「ところで綾辻君。君は、只の恋愛感情のみで、人が犯罪に走ると思うかね?」


 綾辻は細煙管を啣えてゆっくりと吸い、ふんわりと澱んだ空気を吐き出してから云った。


「そんな物、ざらに有る。貴様も、そうした殺人を後押しした事くらい有るだろう」
「確かに、愛情の縺れや嫉妬心から起きた犯罪は多い。じゃが、儂が云っておるのはそう云う事では無いのじゃよ」


 今度は仄かに寂しそうな気を匂わせて、京極は続けた。


「恋愛感情から、見も知らぬ、無関係な誰かを殺す事が有るのだろうか、と云う話じゃよ」


 室内をたゆたう煙が、天井の(ファン)に切り裂かれた。


.

第二幕 夢→←第一幕 弐


ラッキーアイテム

革ベルト


目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
5人がお気に入り
設定タグ:文豪ストレイドッグス , 京極夏彦 , シリアス   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ふらり火(プロフ) - あにもーさん» え、あ、ごめん! (2016年8月21日 21時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー - うん、そういうものだと思ってましたです。文がわかりにくくてごめんね (2016年8月21日 20時) (レス) id: 8d0782fc85 (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» いや、『七夕』の話の台詞やらなんやらを一寸変えるだけだよ? (2016年8月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)
あにもー@NL厨(プロフ) - おぉ!楽しみー! お盆だしね、会いたいよ!!!(誰) (2016年8月20日 21時) (レス) id: a66a974f2e (このIDを非表示/違反報告)
ふらり火(プロフ) - あにもー@NL厨さん» うん、出しちゃおう!( 織田作ね……何としてでも会わせたくて、やっちゃった← (2016年8月20日 17時) (携帯から) (レス) id: 358f9cd815 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ふらり火 | 作成日時:2016年7月20日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。