十 ページ10
彼女は扉の前に立ち、ふうと大きな溜息をついた。
その手は扉に触れているものの、開ける事はしない。
「A…大丈夫がか?」
「…大丈夫、です」
笑ってみせるも、それはやはりぎこちなくて。
また暗い顔に戻る。
不意に勢いよく扉が開けば、中から黒い服を着た男たち。
黒い髪の男はAを見るなり、鋭い目つきで睨み、腕を掴む。
彼女の身体は少しだけ震えていて。
「…お前に話がある。真撰組に来て貰おうか」
「あの事件の事ですか?それは…私には関係ありませんから」
「それを証明する為に来い、って言ってんだよ。じゃなきゃあ、さっき逃げ出すように飛び出して行ったのは何故だ?」
(なんや…こやつら…)
警察とありながら、ただの尋問である。
我慢できずに、Aを庇うようにして男の前に立てば、鋭い刃先が眉間に向けられた。
「何だ…お前。こいつの味方か?」
「わしゃあ、Aの友人ぜよ。そちらさんに何があったか知らんが、問い詰めるようなやり方に腹がたってのう。おんしら、本当に警察か」
馬鹿にするように吐き捨てれば、黒髪の男は逆上する。
宥めるようにして彼らの頭らしき男は、黒髪の肩を叩いた。
騒ぎを聞きつけて部屋の奥から銀時達が現れる。
「…ただいま」
少しだけ重苦しく、暗い雰囲気。
「辰馬。来てたのか」
「Aに用があっての」
未だ俯いたままの彼女を落ち着けるように、ぽんぽんと頭を撫でる。
「いやあすみませんねぇ。うちの部下が気が利かなくって」
黒髪の男はむすりと、不機嫌そうな顔のままだ。
何かを言いたげにしている。
「わかっていただければそれでいいんですよ。わしはアンタらの事情は知りませんけんども、Aを傷つけるようなら、許さんきに」
(陸奥の大事な妹として。一人の友人として)
一瞬だけ睨みつけて、笑みに戻す。
相手は少しだけ恐れをなしたようにひくり、と表情を動かし、そそくさと去って行った。
赤いコートをぎゅ、と握りしめていた彼女は申し訳無さそうに眉を下げる。
「すみません、坂本さん…」
「おう。気にしいな」
安心させようと歯を見せて笑えば、眉をはの字にした。
「銀さん達も、すみません。ほんと」
深々と頭を下げれば、皆呆れたように笑みをこぼす。
「バーカ。お前らしくねぇんだよ。顔あげやがれ」
Aに訳は聞かない。
だが、彼女の中に何かひとつの闇があるように見えた。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時