三十壱 ページ31
煩い日々だった。
もじゃもじゃ頭のサングラスの胡散臭い男はだだをこねていた。
「わしもAからのお菓子貰いたいぜよ…」
「何回言うがか。もう暫く地球に行くことはない。Aからの菓子は我慢するんじゃな」
「手作り…」
Aからバレンタインのお菓子を作っているとメールを受け、ずっと坂本はこうなのだ。
仕事にろくに手もつかない坂本に陸奥は手を焼いていた。
(…仕方ないのう)
陸奥はAに電話をかけていた。
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坂本は仕事に対する気分を損ねていた。
何故ならバレンタインデー当日を迎えてしまったものの、お目当てのお菓子が手元にないからである。
Aに電話するも、バレンタイン当日である。
茶屋に勤めていて客入りが多く忙しいのか、仲間にお菓子を配り歩いているのか、電話には出なかった。
かといって、お菓子が欲しいとメールするのも男としてどうなのかと頭を抱えていた。
抱える頭を踏みつける女が一人。
「おい。何を仕事中に私情を持ち込んどる」
冷たく言い放つ陸奥に言い返そうとした時、目の前に紙袋が渡される。
「なんじゃあ…これ」
「Aと…わしからじゃ」
「どういうことぜよ?」
生物が地球から届くはずがない。
頭を悩ませていると、陸奥は淡々と話す。
「正確に言うと、Aが作うた菓子のレシピを元にわしが作ったぜよ。電話でAに聞きながら、作うたからAが作うたも同然じゃ」
陸奥はAから送られてきた、Aの作ったお菓子の写真を見せた。
袋の中身を開けると、写真より少し歪な形のものが入っていた。
「陸奥様、慣れない料理に四苦八苦なされて、おばばが手伝おうか言うたんですけど、聞かんくて」
「おばば!余計なことを…!」
おばばの暴露に顔を歪める陸奥。
陸奥は不満げな顔のまま、画面に指を滑らせる。
すると、画面には手を振るAがいた。
「坂本さん、お久しぶりです。お姉ちゃんとの合作どうですか?お姉ちゃん凄く頑張ってたんで、食べてあげてくださいね!また、坂本さんと会えることを待ってますね」
嬉しそうににこりと笑い、その画面は止まる。
「おんしが欲しい欲しいと煩いからAに頼んだんじゃ。Aに感謝するぜよ」
紙袋からお菓子を一つ取り出し、口にする。
甘い味が口に広がり、笑みを零していた。
「これが形が綺麗じゃったらのう」
そう茶化すと、また拳が飛んできていた。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時