弍十壱. 悪兎、再会編 ページ21
ひんやりとした冷気と身体の節々のずきずきとした痛みに目を覚ます。
「やあ。お目覚めかい」
声する方に目をやると、ひらひらと手を振る彼。
にこにこと笑う顔が更に憎たらしさを感じた。
「どこよ、ここ…」
天井高く広い屋敷。
元々かなり綺麗な建物だったであろうが、柱は折れ、傷ついた床や剥き出しになった壁が目についた。
「ここはね、夜王鳳仙が使用していた屋敷だよ。っても前のことだし、鳳仙ももうこの世にはいないから知らないか」
「ってことは、吉原か…」
「そゆこと。僕ら夜兎にはぴったりの場所でしょ?屋敷の中じゃ日の光も浴びずに戦えるし」
そう言ってわざとらしく指の骨を鳴らした。
痛む身体を見ると、痣や血が滲んでいた。
意識を失っている間に目の前の男にやられたのだろう。
痛む身体を引きずり、立ち上がる。
「で、私は神威と戦えって訳」
「ご名答」
「戦う理由が見つからないのだけど」
彼はその言葉ににやりと不敵な笑みを浮かべる。
「理由なんてないさ。ただ俺は強いやつと戦って勝ちたいだけ。それにかつて愛した女をやれるなんて面白いじゃん」
私に近づき、肩を組む。
それを振り払うと、顎をくいと上にあげられ目線を合わせられる。
にこにことした表情は消えていて、瞳孔は開き、獲物を狩るような目で見下ろしていた。
「はあ…貴方何にも変わってない。というか私の知ってる神威はもういないのね、残念」
「俺も大人になったからねー、考え方も変わるさ」
「私はもう意味もなく戦うことなんてしたくないんだけど」
「よく言うよ。ついこないだ俺見ちゃったんだけど」
その言葉にはっとした。
(こいつは私の弱みを知った上でこのようなことをしていると)
にやにやと相手の様子を伺う彼に、睨みつける。
今にでもぐっと握った拳が彼に飛びそうな勢いだ。
その様子を見て、顎を持った手を下げ、首をぎりぎりと締め付ける。
「ねえ、戦ってくれないならこのまま締めちゃうぞー?」
爪が食い込み、血が流れていくのを感じた。
ひゅうひゅうと呼吸がしだいに苦しくなる。
(ああ、私があんなことをしなければ)
過去の過ちのせいだと思い、このまま逝くのも悪くないと反抗する気も失せた。
意識が薄れていく中、遠くから聞こえる発砲音とともに目の前が赤く染まった。
「お。面倒な相手が増えちゃった」
私の首から離した彼の腕には、銃痕と複数のクナイがあった。
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Nattu(プロフ) - 麗羅さん» お返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます*辰馬凄く好きなので自家発電にと書いていましたが、読んでいただけて幸いです。楽しみながら書きたいと思います*^^ (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅 - 辰馬の小説、少ないので嬉しかったです!面白くて、次が楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年10月29日 16時) (レス) id: 9e2ac1505a (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - れんりさん» れんりさん、はじめまして。コメントありがとうございます。とても嬉しいです…ゆっくりとではありますが更新していきますので、よろしくお願いします!! (2016年4月11日 22時) (レス) id: db806a29f6 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - 凄く面白いです!!更新楽しみに待ってます…! (2016年4月10日 9時) (レス) id: 285e1a358c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2015年11月17日 23時