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story63* ページ11

病院に行くと、にこやかにおめでとうございます、と笑う医師。
看護師達の表情も本当に明るい。

処方箋と突然の発作時の薬を手に持ち、道を歩く。
お腹を気にしながら回りを見る。

おもちゃをねだる子供。それをやんわりと無視する母親。
臨月なのかぽっこりと膨れたお腹の母親。父親になるであろう男性が近寄ってきて彼女を支える。

意識してみていなかっただけで、こうしてみてみると子供の存在は大きいものだ。

「内海さん」

呼ばれた声は会いたくなかった彼。
近寄ってきてへらへらと笑う。

「今日はどうしたんです?」

「休みなの。じゃあね」

軽く流そうとすると腕を引かれて

「俺じゃだめですか」

と真剣な顔。
だめなの、と言うと更に掴む手の力が強くなる。

「何でですか。俺なら内海さんを幸せにする自信…」

「前も言ったけど私は湯川先生がいいの。それに」

今ここに彼との子がいるから、と言ってゆっくりとお腹を撫でた。
彼はえっ、と言ったまま何も答えなかった。

「ごめんね」

「謝らないで下さい。僕、反省しました」

「えっ」

「今まで女の子は誰でも落とせるんだって思ってて、それで憧れの内海さんに告白したんですけど。
 ちょっと調子に乗りすぎましたね」

へへ、と笑って頭を掻く。

「そうね、ちょっとどころじゃないけど」

「内海さんが幸せならそれいいです、もう」

「ありがとう。でもこのこと誰にも言わないでほしいの」

「何でですか?めでたいことなのに」

「まだ不安定な時期だから何とも言えなくて」

俯いてまだ膨らみもないお腹を見て苦笑した。
手の力はだんだんと緩み、ついに静かに離れる。

「俺、送ります」

「えっ」

「内海さんには元気な子、産んでほしいですし」

「いいよ、すぐそこだから」

「だめです、俺の気が休まりません。乗って下さい」

車のキーをくるくると回しながら言う。
断るにも断れそうになく、そのまま彼の車で自宅に送ってもらうことにした。

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十六夜紅葉(プロフ) - 面白かったです!続き書いてください!それと、ガリレオの沈黙のパレード見に行きたいです!あなた様は見に行きましたか? (2022年9月29日 20時) (レス) id: 25ee4b6236 (このIDを非表示/違反報告)
茉優 - そー言えば...マニューも「マニュー鵺」になりましたよ♪こちらもよろしくデシュ~! (2015年4月4日 13時) (レス) id: 1680021688 (このIDを非表示/違反報告)
茉優 - きゃ~!nattuしゃんお疲れ様♪ (2015年4月3日 9時) (レス) id: 1680021688 (このIDを非表示/違反報告)
藤咲ユウ(プロフ) - 続きが気になります!せめて赤ちゃんが生まれるまでは続けてください!! (2015年3月29日 13時) (レス) id: 6adc363c80 (このIDを非表示/違反報告)
Nattu。(2代目)(プロフ) - 茉優さん» ありがとう 久しぶりなもののもう全然かけなくって汗 時間ができ次第かかせていただきます♪ おお おめでとう! すごいやん (2015年3月26日 23時) (レス) id: 5d34c5e64d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu。(2代目) | 作成日時:2014年3月24日 13時

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