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「 今年も、大我くんが幸せでいられますように 」
遡ること十数年前、中学三年生の元日。その日も、私は京本家と一緒に初詣に行った。年末年始も両親は忙しくしていたので、一人じゃ寂しいだろうと政樹さんが誘ってくれていたのだ。
一緒におみくじを引いて、あんずちゃんと走り回って、どんな百貨店の高級品よりもおいしい大我くんママのお手製おせちをみんなで食べて、バルコニーでお餅を焼く。毎年恒例の元日パーティーは、今でも夢に見るほど私の記憶に鮮明に残っている。
そして訪れるお年玉タイム。お金は生々しいからと、毎年変わったものをくれる京本家からのお年玉。海外の変わったお菓子や、きらきらしたパワーストーンは今思うと子供染みてるなと思うが、当時の私からするとどれも喉から手が出るほど欲しい代物ばかりだった。
さすがに中学三年生にもなると今までのようなものを私たちが望んでいないと政樹さんも察したようで、今年が最後だぞと言って私たちの前に手のひらサイズの四角い箱を二つ差し出した。
重厚感のあるその箱には誰もが知っている有名ブランドのロゴが印字されていて、隣に並ぶ大我くんですらも緊張している様子が伝わる。どうやら只者ではないらしい。
「 え、どっちが先に開ける？大我くん先に開けてよ 」
「 絶対やだ、せめてせーので開けよ？ 」
『 せーのっ 』
箱に入っていたのは、綺麗でかわいらしい指輪。プラチナの輝きを放つそれは、指輪にしてはすこし小さすぎる。この後、自宅にてその値段を調べて驚愕するのはまた別の話にしておくが、それにしてもこの小ささじゃ小指くらいにしか入らない。隣の大我くんの指輪はすこしサイズが大きいが、彼の大きな手ではこちらも小指にしかはまらないようだ。
「 それはピンキーリングだよ 」
「 ピンキーリング…？それってもしかして、 」
ピンキーリング。前に本で読んだことがある。Pinkyは英語で小指を表していて、海外には"幸せは右手から入り小指から逃げる"という言い伝えがある。だから左右の小指に必要に応じて小さな指輪を付けることによって、幸せをつかんだり、今ある幸せを逃げないようにするんだとか。
「 これからも、うちの大我をよろしく頼むよ 」
この日を境に、私は京本家から姿を消した。
・
続く
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はくまい(プロフ) - Hano.さん» コメントありがとうございます。亀投稿で申し訳ないです。なるべく更新頻度を上げられるように頑張りますので気長にお待ちいただけるとありがたいです。 (2021年8月19日 20時) (
レス) id: 294edd9998 (このIDを非表示/違反報告)
Hano.(プロフ) - この作品が大好きでずっと読み返してます！これからも頑張ってください！更新待ってます！ (2021年8月19日 15時) (レス) id: 34064f93e5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はくまい | 作成日時：2021年6月22日 18時
