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ページ27

「か、川上さん?」
「……ごめん」


 絞り出した謝罪の言葉は、あまりにも今更過ぎるものだった。ああ、本当に全てが遅い。


「どうしてもっと早く、言ってあげられなかったんだろう」


 全部全部、俺が臆病だった所為だ。


 彼女の愛情を正面から受け止める自信が無くて、彼女と真っ直ぐに向き合う勇気が無くて、ずっと逃げ続けていた。与えられる好意が無限にあると思い込んで、溢れんばかりの彼女の愛をそのままにしていた。


 もっと早く彼女の気持ちに応えていたならば――。


「川上さ……」
「好きだよ、Aさん。……好きだ」


 本当はずっと好きだった。何処までも真っ直ぐに俺を見つめて、好きだと言ってくれる彼女の事が。ひたむきな想いを寄せながら、いつだって全力でぶつかってくる彼女の事が。


 ハッと彼女が息を呑むのが分かった。俺の腕の中で直立不動状態の彼女は数秒の間を置いて、


「どっ……何処かにカメラとか仕掛けられてませんかっ?」


 と上擦った声を出した。その返事に思わず脱力してしまう。


「いや、この期に及んで誰がドッキリを仕掛けるんだよ」
「だ、だってなんか、えええ……急展開過ぎて……」


 そもそも世界が終わるという状況が急展開なのだ。そこら辺に居る男が告白の一つや二つした所で、今更、何の見世物にもなるまい。


「ほんとに……?」


 消え入りそうな声で呟いた彼女の頭が、ぽすんと俺の胸に収まる。それから何処か戸惑うように、でもしっかりと。彼女の細い腕が俺の背に回された。

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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時

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