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「拳くん」
「ん?」
「今までありがとね」
「……今までも、これからも、でしょ」
「そうだね」
そんな最後の別れみたいな言葉を言わないで欲しい。今生の別れになると知っていながらも、勝手な事を思ってしまうのは男の性だろうか。まるで俺が置いていかれるような気がして、何故だか焦ってしまう。
「ねえ、眠くなるように何か難しい話聞かせてよ。私が全然興味無さそうなやつ。拳くん得意じゃん、そういうの」
「あれ、なんか突然disられてる気がする」
「disってないよ。ほら、小難しいやつ聞かせて」
「うーん、じゃあ最近聞いた話なんだけど――」
彼女の知らないような難しい単語をわざとたくさん織り交ぜて話し始めると、あからさまに興味の無さそうな声で「ふーん」「そっか」等と相槌が返ってきた。
確かに彼女が全く興味の無い話を選んではいるのだが、こうも分かり易くつまらなさそうな反応が返ってくると、それはそれでちょっと傷つくものだなと思った。
「それで――、と。A?」
やがて相槌が聞こえなくなったと思ったら、代わりに寝息が聞こえ始めた。どうやら小難しい話を聞いている内に、本当に眠ってしまったらしい。子供のようなその行動は、薬による効果なのだろう。河村に感謝しなければ。
すぅすぅと規則正しい呼吸音が聞こえる。共に暮らし始めて以来すっかり聞き慣れた彼女の寝息を聞いていると、何だか俺まで眠たくなってくる。いよいよ世界が終わると言うのに呑気なものだ。
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奈都(プロフ) - さっちいさん» 名作第一位更新とのありがたいお言葉で恐縮です。一年半以上も前に書いた作品ではありますが、こうして新たに読んで頂けてとても嬉しいです! (2021年8月6日 23時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
さっちい(プロフ) - 私の中の名作第1位更新しました…すごく好きな作品です! (2021年7月29日 10時) (レス) id: ebeed9cbc6 (このIDを非表示/違反報告)
奈都(プロフ) - 清華さん» ありがとうございます。悲しい終わりではあるのかも知れませんが、それでも各二人にとっての幸せの形を描いたつもりでいます。泣いて頂けたら嬉しいな、と思いながら書いていたので本望です…! (2020年4月8日 22時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
清華(プロフ) - 一気に7人分をworld endを見ますた...心痛いですよ、めっちゃめちゃ泣きました、もうきついです(笑) (2020年4月1日 16時) (レス) id: 1c085b2c66 (このIDを非表示/違反報告)
Hërø(プロフ) - 奈都さん» 夢は大丈夫だったのですが時々それぞれのメンバーの最後を思い出してグッときてます笑 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 7ab3904f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2019年12月9日 20時