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オートロックを解除してエントランスに入ると、広々とした廊下を進んでいく。このマンションは、建物の大きさの割には部屋数が随分と少ないらしい。つまり一戸あたりの敷地が広いという事になる。
或る一室の前で立ち止まった彼が、ポケットから取り出した鍵を挿し込む。ガチャリと開錠の音がした。ドアを開き一歩中に入った彼は、そのまま私を振り返る。
「すみません、荷物はその辺に……」
言葉の途中で、彼は開いた扉に背を預けながら、ずるずるとその場にへたり込んだ。
「ちょ……っ、大丈夫ですかっ」
慌てて玄関の端にクーラーバッグを下ろし、自由になった手で今度は彼の腕を引き上げる。
「お兄さん、立てます？」
「何とか……。すみません、眩暈が……」
ふらりと立ち上がる身体は気を抜けばすぐにでも、また、くずおれてしまいそうだった。本当に救急車でも呼んだ方がいいのではないか。いやでも意識はあるし、麻痺が出ている訳でもないし――。
とにかくこんな玄関先で放置する訳にもいくまい。初対面の人間の家にズカズカと踏み込むのは気が引けるが、今はそんな事を言っていられなさそうだ。
せめて座れる場所に、とフラフラ歩く彼の後ろについていく。廊下の突き当たりにある扉を開けると、そこは広々とした空間になっていた。作業のし易そうな大きなテーブル、幾つか並ぶモニターとPC、予定などが書きこまれたホワイトボード。通常ならリビングという事になるのだろうその場所は、以前動画で見た事のある部屋だった。執務室と呼ばれていた場所だ。
つまりここは彼の私的な家ではなく、QuizKnockのオフィスだった訳だ。
成る程、オフィスを『家』と表現していたのか、と考えると合点が行く。確かに彼にとって、ここは自宅と実家に次いで第三の家のようなものなのだろう。
同時に、この時点で彼が物凄くそっくりな別人である可能性が完全に潰えた。この人は間違いなく伊沢拓司だ。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
