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目的地のマンションにはすぐに到着した。二分も歩いていないのではないだろうか。低階層のマンションだが、なかなか高級そうな外観をしている。と言うか、この一角にあるマンションは何処もなかなかのお値段がしそうだ。
「ありがとうございました。助かりました」
「いえ。じゃあこれを……」
運んできたクーラーバッグを手渡す――と、彼はその重さを忘れていたのか、がくんと腕が下がった。
「っと……!」
クーラーバッグを落としそうになり、慌てて両手で持ち上げる。万が一、中身が精密機械だったりしたら大変だ。
「うわっ、すみません……」
「大丈夫です。それよりもあの、もしもご迷惑でなければですけど、このままお部屋まで運びましょうか?」
どうせここまで来たのなら、部屋まで荷物運びをするのも変わらない。と思うのと同時に、自分の提案に我ながら少し驚いていた。
流石にまったく見ず知らずの男性だったら、私一人ではここまではしないだろう。具合の悪い振りをして部屋に誘い込んでそのまま――なんて背筋の凍るような話も、世の中には溢れ返っている。
ただ、今ここに居る人は、一方的にではあるけれど見ず知らずの相手ではない。勿論、彼の生活のほんの一部を切り取った姿だけで全てを理解出来るわけではないが、とりあえず本当に具合が悪いのであろう事は、彼の顔色の悪さから容易に分かる。
「本当にお手数かけます……」
苦笑と共に漏れた言葉は、私の問い掛けに対する肯定を示していた。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…! (2019年9月14日 16時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています!! (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2019年8月11日 10時