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「伊沢、最近何かあった?」
須貝さんにそんな事を言われたのは、Aさんと食事の約束を取り付けた三日後の事だった。
「え、何かって?」
「いや、機嫌良さそうと言うか、表情が緩い事が多いなって」
今も――と言われる。俺は手にしていたスマートフォンの画面と須貝さんの顔を交互に見遣った。丁度、Aさんとの何気ないLINEのやり取りが終わった所だ。別にそんなつもりは無かったのだが、自然と頬が緩んでいた可能性は否めない。
「ああ、確かに最近の伊沢さん、ニヤニヤしながらスマホ触ってる事多いですよね。珍しい」
あんなにLINE無精なのに――と続けて山本が首を傾げる。俺は基本的に筆不精な方で、仕事以外の連絡に関しては返信が億劫になってしまうタイプだ。
これは参った。そんなに顔に出ていたのか。どう返したものかな、と思っていると、
「あれか。女だな」
「へぇ。伊沢さんに恋バナが」
二人は何やら勝手に結論を出して、ニヤついた顔をしながら俺を見つめてくる。ハッキリと恋愛の話だという訳では無いのだが、まあ女性の話ではあるので否定も出来なかった。
するとそこへ新たな勢力――こうちゃんが目を円くしながら近寄ってきた。
「えっ、伊沢さん彼女出来たんですか?」
「飛躍し過ぎだろ!」
思わず強めに突っ込むと「いやだって今のそういう流れだったでしょ」と返される。まあそういう流れに聞こえなくもないが。
「彼女じゃねえよ」
短く言うと、こうちゃんはハハッと薄ら笑いを浮かべた。
「それ、今はまだ彼女じゃない、って意味でしょ。俺、知ってるんすよ。伊沢さんって『今は仕事が恋人なんで全然そういうの興味ないです』って顔しといて、いつの間にかしれっと彼女作ってるタイプ」
「お前、俺の事どういう男だと思ってんの?」
「要領が良い割に恋愛は不得意だし女心も分かってないけど、決める時はちゃんと決める男」
「馬鹿にしてんの?」
「してないしてない! 褒めたじゃん!」
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…! (2019年9月14日 16時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています!! (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2019年8月11日 10時