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「来週の月曜なら私、少し早めに行けるから。六時過ぎには着けると思う」
「じゃあ六時半で予約しておきますね」
「うん、お願いします」
電波に乗って聞こえる柔らかな声が心なしか弾んでいるような気がするのは、そうであってほしいという願望故だろうか。
「それにしても、近くに住んでるのに私全然知らなかったよ、そのお店」
「なんか割と最近出来たばっからしいっすよ」
「へえ、そうなんだ。……ふふ」
不意に笑い声が聞こえた。何か面白い事でもあっただろうかと首を傾げる。
「ん、どうかしました？」
「ううん。ただ、楽しみがあると明日からの仕事も頑張れるなぁと思って」
耳元に届く嬉しそうなその声に、うっかり自惚れそうになる。その『楽しみ』はどういう意味なのか、問い質しても良いものかどうかを迷っていたのだが、直後、
「美味しいご飯をニンジン代わりにぶら下げると、結構頑張れちゃう性格なんだよね。単純なんだけど」
と続いた声に、ほんの僅かに落胆してしまった。
まあそうか。そうだろうな。別に俺と会う事自体をそんなに楽しみにしてくれている訳ではないのだろう。数度会っただけの関係で、何を期待していたんだろうかと自分が恥ずかしくなる。だけど少し、本当に少しだが残念に思うのも事実な訳で。
「……ニンジンはご飯だけ？」
思わずそんな事を口走ってしまい、慌てて自らの口を塞ぐがもう遅い。Aさんの耳にはしっかり届いていたようだった。
「えっ？」
「あ、いや、何でもないっす」
――何を言っているんだ俺は。
テストで良い点を取ったのに母親に褒めて貰えなくて拗ねた子供のようだ。自分の期待した反応と違ったからと言って、こんなガキっぽい真似をするなんて宜しくない。適当に濁して、話を変えてしまおう。そう思った次の瞬間、
「あの、えっと……伊沢くんとご飯に行ける事自体が楽しみ、ですよ？」
聞こえたのは、少し戸惑ったような何処か恥じらうような、そんな声で。思わず息を呑んだ。
「っ……」
別に誰に見られている訳でもないのだが、うっかり緩んでしまった口元を隠そうと手で覆った。ああ、流石にこれはニヤけない方が無理というものだろう。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
