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「……ふっ」
うっかり笑ってしまった。あまりにも長い時間ときめきと無縁だった所為か、反応が死ぬほど可愛くなくて己に呆れる。当然、そんな私の反応に伊沢くんはやや戸惑いを見せた。
「え、なんで笑うんすか？」
「いや、なんか急に名前で呼ばれたものだから、ニヤける自分を隠そうとしたんだけどうっかり笑っちゃって」
馬鹿正直に説明すると、彼は益々怪訝な顔になる。
「別に隠さなくても、普通にニヤければいいのに。って言うか、頑張ってちょっと砕けてみたんですけど。すみません、やっぱ失礼っすよね、いきなり下の名前で呼ぶのなんて」
「ううん、全然問題無いし、親しくしてくれる感じで嬉しい。伊沢くんが良ければ是非それで呼んで欲しいな」
素直に嬉しい事を伝えると、伊沢くんはあからさまにホッとした顔をした。案外分かり易い人なんだな、なんて思う。
「ごめんなさい、変な反応しちゃって。男の人に下の名前で呼ばれたのが久しぶりだったから、なんかつい、ね」
元彼と別れたのは三年前。それ以来、仕事が忙しいのも手伝って、異性に対して心が華やぐ事なんて無かった。下の名前で呼ぶような間柄の男友達も居ないし、だからこそ、うっかりドキッとしてしまったのかも知れない。
「Aさん、彼氏居ないんですか？」
「彼氏居たら、私、今ここに居ないですよ。そう言う伊沢くんこそ」
「俺も特定の人は居ないですよ。って言うか、忙しくてそれどころじゃないっす」
「ああ、まあそうだよね……」
動画にテレビに講演会に執筆に、と伊沢くんがとにかく忙しそうなのは傍から見ていても明らかだ。多分、一ファンでは知り得ないような、表に出ていない仕事も沢山しているのだろう。
同時に、何故か少しだけ安堵の感情が浮かんだ。そうか、今の伊沢くんには恋人は居ないのか。いや、まあ別に彼に恋人が居ようが居まいが、私には関係の無い話なのだけれど。
*-----*
先日、こちらのお話のお星様が赤くなりました。いつも読んでくださる皆様のおかげです。ありがとうございます。
ゆっくりペースで進んでおりますが、そろそろ折り返し地点です。今後もどうぞよしなに。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
