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東大王の収録の際、映画のチケットを貰った。
一応前回で東大王チームを卒業した身として、今日は楽屋入りの時間を四時間もずらして待機していた訳だが、水上や鶴崎くんには「どうせ出るだろうと思ってた」という顔をされてしまった。何だか気に喰わない気もするが、俺が彼らの立場でも同じ事を思っただろうから、特に何も言えなかった。
収録が終わった後、スタジオの隅の休憩スペースで前回までの仲間たちプラス東大王チームの新メンバー候補たちと話していた際、やってきたプロデューサーが、好きに持っていって構わないという言葉と共にチケットの束を置いていったのだ。
置かれたチケットを早速二枚手に取りつつ、光ちゃんが小さく呟いた。
「映画かぁ。どうしようかな……」
多分他の誰にも聞こえていないけれど、たまたますぐ傍に居た俺にだけはその声が聞こえた。どうしよう、と言いつつちゃっかり二枚手に取る辺り、一緒に行く当てがあるのだろう。
「光ちゃん、行く人決まってんの?」
何となくそう問い掛けると、彼女は少し照れ臭そうにはにかんだ。
「え? ふふ。内緒です」
――成る程、居るんだな。それもこの反応は男だな。
何処の誰かは知らないが、こんな可愛い子を彼女にしている奴は果報者だ。何なら光ちゃんに対しては兄のような気持ちもあったりするので、うちの妹に手を出すのはどんな男だ、という感情が多少無いでもない。恐らく水上や鶴崎くんも、俺と同じような感覚でいるのではないだろうか。
「伊沢さんこそ、誰か居るんですか? 一緒に行きたい人」
「んー……」
逆に問い返されて返答に詰まる。顎を軽く撫でながらチケットを見下ろしていると、
「珍しいですね」
と光ちゃんが言った。
「え、何が?」
「こういう質問で、伊沢さんが即答を避けるなんて」
誰か居るんですね――と続けて彼女は微笑む。迂闊だった。確かに普段の俺らしくはないかも知れない。彼女の観察眼の鋭さに、肩を竦めて苦笑した。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…! (2019年9月14日 16時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています!! (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奈都 | 作成日時:2019年8月11日 10時