3-4 ページ17
見ず知らずの男性に対して一人であそこまでする女は、底抜けに優しいか、相当な世間知らずか、万が一襲われても対処出来る腕力の持ち主か。そのいずれかに該当するのだろう。
という事は、そもそも自分を知っている相手だった――と伊沢くんが考えるのは、実に妥当な流れだった。
「黙っていてすみません。実は、いつも動画を拝見しておりまして……」
「そうなんですね。ありがとうございます」
見透かされていたようで恥ずかしくなるが、伊沢くんは変わらず穏やかな微笑をたたえている。テレビでよく見る紳士モードの笑顔は、実際に前にするとなかなか強烈だ。
「とは言っても、流石に近所で倒れかけてる男の人がいつも見ている有名人だなんて思わなくて、正直度肝を抜かれたんですけど……」
「その節は本当にすみません」
「あ、いえいえ、伊沢さんが謝られる事じゃないです。具合が悪いのは仕方が無い事ですし」
体調不良だったのはどうしようもない話だ。勝手に度肝を抜かれたのは私なのだし、彼が謝る話ではない。
コーヒーカップを手に取り、まだ熱いカプチーノに口をつける。合わせるように、伊沢くんもストローに口をつけた。私よりも長い時間居ただけあって、彼のアイスコーヒーはもうすぐ無くなりそうだ。これ以上、長く話す事も無いだろうし、私も早めにカップの中身を空にした方がいいだろうか、なんて考えていると、
「ところで、Aさんってクイズとかやられてます?」
唐突にそんな事を訊かれた。
「え? ……いえ、私は全然。テレビでクイズ番組を見たりする程度です」
子供の頃から実家のテレビはクイズ番組をつけている事が多かった気がする。その名残で、何となくテレビをつけるとクイズ番組にチャンネルを合わせたりはするが、あくまでもその程度だ。
732人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…! (2019年9月14日 16時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています!! (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:奈都 | 作成日時:2019年8月11日 10時