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土曜日から驚くほどあっという間に過ぎ去った五日間。木曜日の今日、定時きっかりに仕事を切り上げた私は、会社のトイレで素早く化粧を直し、いそいそと電車に乗り込んだ。
お礼をしたいので、と言う伊沢くんに押され、彼と最寄り駅のカフェで会う事になった。本当にそんなつもりでは無かったので逆に申し訳ない気持ちでいっぱいなのだが、向こうがどうしてもと言うので仕方が無い。
電車に揺られているとバッグの中で振動を感じた。スマートフォンを取り出すと、伊沢くんの名前が表示された。早めに着いたので一番奥の席に居ると言う。少し待たせてしまう事になりそうで申し訳ない。
人の波に押されるようにして電車を降りる。外に出ると三月の夜はまだ肌寒く、トレンチコートの襟元を少し掴んで寄せた。
待ち合わせのカフェまでは駅から歩いて一分程度だ。約束の十九時まではあと五分。ギリギリの到着になってしまうが仕方が無い。少し早足でパンプスの踵を鳴らした。
目的地はそこそこ繁盛しているが、チラホラと空席も見られた。一番奥の席に居ます、という文字を思い出しながら店内を見渡す。その通り、一番奥の目立たない席でノートPCを広げている男性の姿があった。――ああ、やっぱり本物だ。
口の中で伊沢さん伊沢さんと何度か繰り返す。普段、動画を見ている時は伊沢くんと呼んでいるが、実際に対面する以上、いきなりその呼び方では失礼にあたるだろう。
「伊沢さん」
声を掛けると、一瞬の間を置いてから伊沢くんが目線を上げた。私に気付いた彼はすぐさま立ち上がる。
「すみません、お待たせしてしまいましたか？」
「いえ、大丈夫です。わざわざ来て頂いてありがとうございます。……と、Aさん、何か買ってきます？」
「あ、そうですね。ごめんなさい、ちょっと待っててください」
何も注文せずに居座るのは流石に良くない。彼に軽く頭を下げてからレジへと向かった。
それにしても――あの伊沢くんが私の苗字を呼んでいるなんて。こんな事が本当にあるんだな、と思うと、感動という言葉も通り越して何だかよく分からなくなってくる。先週の土曜に引き続き、夢でも見てるんじゃないか。
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
