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「伊沢、アイマスクは?」
「あ、欲しい」
「はい」


 愛用のホットアイマスクの箱から中身を一つ取り出し、福良さんが持ってきてくれる。別に今日は目の疲労を感じてはいないが、少しでも体を解してくれる物は使っておいた方がいい。これから明るいオフィスで休むのだし。
 封を切ってアイマスクを取り出し装着する。仰向けになると少し三半規管がおかしくなるような気がしたが、二時間前までと比べると幾分かマシにはなった。


「でも良かったね、親切な人に拾って貰えて」


 福良さんのしみじみとした声が聞こえた。全くもってその通りだ。


「このマンションに住んでる人とかでもなく、全然知らない人だったんでしょ?」
「そう。なのに、俺に付き添って荷物まで運んでくれました」
「マジで超親切な人じゃん」


 オフィスが入るこのマンションの住人や、ご近所さんという訳でもない。近所に住んでいると言っていたので、まあご近所さんと呼べなくもないかも知れないが、少なくとも向かいや隣のマンションに住んでいる訳でもなさそうだ。本当に見ず知らずの他人だった。


 駅からオフィスに行くのなら俺が動けなくなった場所は通り道ではあるから、いずれ身内の誰かが見つけてくれたかも知れないけれど。それでも、万が一という事はある。
 だから、あの女性が荷物を手に付き添ってくれた事は、本当にありがたかったのだ。






「まあとりあえず今日の所はこっちで勝手にやっておくからさ。伊沢、ちょっと休みなよ」
「ん……、すみません……」


 福良さんの言葉に緩く頷く。本当に心底申し訳ないが、今はその言葉に甘える事にした。つくづく俺は頼もしい仲間たちに囲まれている。


 程なくして、俺を抜いた会議が始まった。目を瞑り全身から力を抜くと、聞こえている彼らの声が段々と遠くなっていくのを感じる。多分あと数分もしない内に寝てしまうだろう。


 年末に骨折した時も思ったが、体調不良の時に自宅で一人でいるとメンタル面を大分やられてしまう気がする。
 基本的には一人で居たいタイプなのに、こんな時ばかり人恋しくなるのはどうかと思いつつも、誰かと居る方が合理的なのは確かな訳で。


 誰かが居てくれる、という安心感を改めて噛み締めつつ、気付いた時には意識を手放していた。


 * * *

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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…! (2019年9月14日 16時) (レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます!トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています!! (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:奈都 | 作成日時:2019年8月11日 10時

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