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「でも俺はAさんの話も聞きたいな」
「私、伊沢くんみたいに上手に喋れないよ」
「そこは俺のインタビュアーとしての腕の見せ所っすね。じゃあまあ軽い所から……ご趣味は？」
「あはは、お見合いみたい」
切り口があまりに普通過ぎて、逆に斬新な気さえする。伊沢くんのグラスは既に四杯目。外見上は全く変わらないけれど、心なしか上機嫌な様子が見て取れた。楽しんでくれているのなら何よりだ。
「趣味かぁ。趣味が読書ですって胸張って言えるほど数を読んでる訳じゃないけど、本を読むのは好きだよ」
「へえ。どういうの読むんですか」
「基本的には小説かな」
「ジャンルは？」
「うーん。小説なら何でも読むけど、割合で行くとミステリーが多めかも」
いい意味で期待を裏切られる内容の物が好きだ。終盤でどんでん返しがあったり、凝ったトリックだったり。驚きと感動、それから少しのカタルシス。そういう物が詰まった話が好きだった。
「伊沢くんはエッセイが好きなんだよね？」
「おっ、よく知ってますね」
凄いな――と伊沢くんが小さく続ける。ただのファン知識であって別に凄くはないのだが、彼に褒められると悪い気はしない。
「私、あんまりエッセイ読まないんだよね。伊沢くんにとって、どういう所が魅力なの？」
「んー。エッセイって結構雑学が詰まってるんですよね。面白い本を読みながら知識が身に着くって最高じゃないすか」
「まるでQuizKnockのような」
「そう！ 楽しいから始まる学びね。正にそこが目指してるべき場所の一つでもあるんですけど。あと俺、ドキュメンタリーが好きなんですけど、エッセイみたいなノンフィクション物は……ってほら、だからまた俺ばっか喋ってる！ 駄目だよ、Aさん」
「まあまあ。続きを聞かせてくださいよ、伊沢先生」
笑いながら話の続きを促すと、何だかんだで彼はまた語り始める。さっき「酒が入るとあんまり喋らなくなるんですよね」なんて言っていたような気がするが、随分と饒舌だ。
何処か丸みを帯びたまろやかな感じのする伊沢くんの声を、こうして独り占めしながら聞き続けるなんて事は本当に贅沢で、夢みたいで。耳に優しいその声をいつまでも聞いていられたら――なんて貪欲にも思ってしまった。
＊ ＊ ＊
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奈都(プロフ) - Komiさん» コメントありがとうございます。トロイメライが出来上がってる二人の話なので、順番が逆になってしまうのですが、あの関係になるまでにこんな流れがあったんだな、という感じでお読み頂ければ幸いです。出来るだけマメに更新していくので是非今後もお願いします…！ (2019年9月14日 16時) (
レス) id: 1ea9b7d420 (このIDを非表示/違反報告)
Komi(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます！トロイメライの頃からizwさんの2人が大好きで、始まりのストーリーが読めるのがとても嬉しいです^^毎日更新を楽しみに生活しています笑これからも応援しています！！ (2019年9月14日 5時) (レス) id: 31bd00c83a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奈都
| 作成日時：2019年8月11日 10時
