【R E B O R N !】雪の守護者は白兎『 Ⅲ 』 (ページ18)

今日:2 hit、昨日:30 hit、合計:5,370 hit

百九片ページ18

穏やかに木々を揺らす風。
暖かな日差しが木漏れ日となって地を照らす。
今日も気まぐれに雲は大空に浮かんでいる。
昔はこういう風を感じられる場所で、昼寝をするのが日常だった。

目を瞑る。
懐かしい故郷の空気が悪戯をするように髪を弄んでいく。
いつかの屋上で胸の上に柔らかい毛玉が眠っていた頃を思い出す。

「久しぶりだな...並盛」

黄色い鳥が肩に降り立つ。
ぴょこぴょことその場で数度跳ねて、くるくると周りを見渡し、翼を広げて顔を斜めに傾ける。

「今は居ないよ」

教えてあげると一声鳴いて身じろいだ。
指先を差し出すと飛び移って、僕の手の上で縦横無尽に遊びだす。
ふと動きが緩慢になって、左中指に小さな足を乗せ、太陽光を反射するそれを見つめた。

「分かるんだ。君」

薬指で大人しく煌めく指輪。
白銀でできた爪に囲まれ透明な氷が宝石のように鎮座している。
彼女はそんなつもりはなくて、ただ僕が身に着けやすいようこの形にしたんだろう。
だけど僕にとってはそれ以上の意味を持つ。

黄色い鳥はその指輪に身を寄せる。
体毛で優しく包み込む仕草をして、心配だとでも言いたいように。

「後で遊んでもらいなよ」

彼女は今雑務をしている。
僕だって本当は彼女と遊びたいんだけど、やらないといけないことがあるからね。
赤い鳥居の上で唸る緑の雷を視認する。目標はあそこにいるらしい。
白昼堂々と、この並盛で、風紀を乱す輩がいる。

「まずは害獣の駆除が先だ」

黄色い鳥が僕の肩に戻ってくる。
鳥居をくぐりながら低ランクの指輪を嵌める。
広く長い参道を足早に進む。

昔はよく祭りをやっていた。
ここは敷地が広い分屋台が多くて、悪徳な連中も少なからずいた。
だから活動費を払いたくない、反抗的な奴は問答無用で潰した。
従順な奴が例え悪徳な商売をしていても、払うってことはどっちが上か理解してるってことだからね。
群れるのは本意ではないし、必要最低限の治安維持だけやって、提灯の光に背を向け、毎年のように山を登る。

石段の一段目。
革靴でしっかりと踏みしめて階段の先を見上げる。

境内は神聖な場所として屋台みたいな俗世的なものはなかった。
裏は更に人気がなく、月がよく見えた。
花火は綺麗だが、咲くたびにあがる歓声が好みではなかったから最初の頃はすぐに帰ったけど。
小さな兎が興味津々に大輪の花を見つめるから、仕方なく、最後が打ちあがるまで付き合うようになった。
僕が背後の群れを許せたのはその時だけだった。