【R E B O R N !】雪の守護者は白兎『 Ⅲ 』 (ページ12)

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百三片ページ12

入江視点

静かな廊下に彼女たちのヒールが鳴る。
それは僕の後ろを、少しも距離を変えることなくついてくる。

「野猿と太猿？第3アフェンドラ隊の？負傷ってどういうことだい？」

「報告では兄弟ゲンカをしたとのことです」

首元までしっかりとチャックを上げて制服を着る。
僕の得意分野である研究とは異なる、白蘭サンから命じられた仕事。
その仕事にあたるには、制服の着方と同様に気を引き締める必要がある。

「...なくもないだろう。野蛮な連中だよブラックスペルは」

「処分はいかがなされますか？」

「彼らきっと外様の上官の言うことは聞き入れないだろう...僕が直接第3部隊の隊長と話を付けるよ」

白蘭サンの右腕とか噂されてる人間に対して、例え隊長ほどの実力者であっても、ブラックスペルの人は良い感情を抱いていないだろうけど。
白蘭サンの命に従うために、そして僕の目的を達成するために。
ブラックスペルの人とも仲良くしていかなくちゃいけない。

...お腹がキリキリと痛む。
思い出しちゃったよ。白蘭サンから届いた花。
あれを直視したくなくて研究室にこもってたのに。

「ところで君、白蘭サンから送られてきたものみた？」

「えぇ。格納庫いっぱいに。たしか花言葉は....」

「調べたさ。期待...だろ？プレッシャーで僕を殺す気なのさあの人は」

「まさか。そのようなことは...」

「変な意味じゃなくてね。僕がそういうのに弱いってわかってやってるんだ。意地が悪いよ」

今だって頑張って気を張って雑談してる。
後ろをぴったりついてくる、彼女たち。一人一人に名前はなくて、総称してチェルベッロ。
日によって髪の長さが全然違ったりするから、本当に複数人いる謎の人物達。

「白蘭様がそれだけ入江様を信頼なさっている証ですよ」

「まあね。嬉しくないわけはないけどさ」

適切な言葉を選び返す。不自然ではないだろう。
白蘭サンに忠誠を誓いながら、白蘭サンの学生時代からのお友達であるフランクさを出して。

「フフ...ほほえましい限りです」

「白蘭様と大変仲がよろしいのですね」

彼女達は僕が日本に行くと決まってから、白蘭サン直々に強引につけられた部下。
探ろうとしていることすら白蘭サンには知られたくないから、詳しくは調べるつもりはないけど、彼女達は明らかに白蘭サンの息がかかっている。
あの人の考えそうなことだ。
メローネ基地の各所にあるカメラも、白蘭サンなら自由に見ることができる。常に監視されてると思っていい。