四十一片 ページ45
きょろきょろと辺りを見回す鈴。
兎の時との視界の差に驚いているのだろうか。
昨日は帰った途端寝てしまったようだったし。
夜に入れて結局飲まなかった珈琲を机に放置したままだったから片付け、朝の見回りのために出かける準備をする。
朝、といっても今は午前四時。
朝食を食べる気にはなれない。
ぐいぐいと裾を握る感覚で後ろを振り返る。
裾を引っ張っていた鈴が持っている手帳には筆記された文字列。
『 きいろい とり は どこ に いった のでしょうか 』
そういえば見当たらない。
いつもなら家に飛んできている時間なのに。
さっきの鈴の見回す行動はもしかしたら探す為だったのかもしれない。
「探しに行こうか」
一緒に外出しても危険はない。
兎の状態でも見回りの際に怪我を負ったことはない。
運動神経は当然、人間の時の方が向上しているのだから。
鈴は少し強めに首を上下に振る。
心配なのだろう。
誰かに捕まっていないか、とか。
事故や事件に巻き込まれていないか、とか。
鈴は黄色い鳥と仲がいいから。それは人型でも変わらないんだろう。
学ランをハンガーから外し羽織る。
「失礼します！」
玄関のほうから声が聞こえる。
ちょうどいい、彼に聞こう。
「やあ、おはよう。草壁」
「おはようございま...」
途中で固まっている。
僕の後ろからひょこりと顔を覗かせる鈴。
「なに？」
「...！い、いえなんでもありません(夢だと思っていた･･･)」
いつにも増して挙動不審だけど、まあいいや。
「黄色い鳥、見なかった？」
「鳥...ですか？見かけてないですね」
「そう」
知らないなら自分で探す。
草壁が知らないならそれ以外の風紀委員だって知るはずがない。
まずはどこから探そうか。いそうな場所を思案していると、草壁の携帯が鳴る。
「！」
「いいよ」
「失礼します」
草壁はこちらに背を向けその電話に対応する。
その間に鈴の足に合う靴を探し、履かせる。
これも制服と同時に新しいものを頼もうか。
「報告します」
なぜか冷汗をかきながら、草壁は電話の内容を告げる。
「何かに取り付かれたように黒曜に向かう動物達を発見した...とのことで」
当たり。明らかにそれだ。
「...行くよ、鈴」
素早く首を振る鈴と共に、家の鍵を閉め足早に向かう。
「えっ、お待ちください！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 131人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪兎(月兎)(プロフ) - ユズナ様、ご指摘有難うございます。修正いたしました。 (2015年10月1日 20時) (
レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ユズナ(プロフ) - 三十三片、うつ伏せの状態をうつ伏せにするっていう謎の描写が… (2015年10月1日 20時) (レス) id: 3fdd76a3cc (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(月兎)(プロフ) - 1807(銀)様、コメントありがとうございます。そろそろ二期に･･･ (2015年2月2日 0時) (レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
1807 - 銀の名を変えました〜鈴ちゃん、強いなぁ・・更新楽しみにしています (2015年2月2日 0時) (レス) id: 917ddba170 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(月兎)(プロフ) - 銀様、コメントありがとうございます。理由があって人間のままです。マシマロ類の柔らかさが好きです、個人的に。 (2015年1月18日 11時) (レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪兎(月兎) | 作成日時：2014年9月15日 14時
