一片 ページ3
兎を拾った。
打ち捨てられた段ボールの中で震えながら蹲っていたところを保護した。
体には埃一つついておらず、たぶん捨てられたばかりだったんだろう。
念のために給湯室でぬるめの湯を沸かし、軽く洗ってやる。
毛には傷みの類は一つも見当たらないし、兎の中でも珍しいアルビノの紅い瞳がガラス玉のように滑らかな光沢を見せている。
飼い主は一体どんな理由があってこの兎を捨てたのだろうか。
わざわざここまで目を掛けて、いらなくなったというわけがないだろうし。
････まあいいか。保護施設に預けるなり売るなりやり方はあったのに、わざわざ所有権を放棄したんだ。
これからは僕の物ってことでいいだろう。
兎の主食といえば人参のイメージだ。
帰り際に近くの八百屋で購入した人参をスティック状に切っておく。
風邪をひかないように暖房を入れ、喉が渇いているかもしれないし水も用意しておく。
湯浴みを済ませ十分に乾かしたのに、未だに小刻みに震える兎を新しいバスタオルで包む。
耳を立たせ、どこか不安げに兎は僕を見上げている。
何を求めているのかは、すべて試せばわかることだ。
早速切った人参を口元に持っていく。
ひくひくと鼻を動かし、小さな口を開ける。
...食べた。
カリカリと人参を噛みながら前に進み、すべて食べ終わるとバスタオルの中で伸びをする。
...かわいい。
兎も群れる草食動物だ。孤独だと死ぬとすら聞いたことがある。
だけど、思った以上に気に入ったかもしれない。
耳に鈴がついていた。
前の飼い主にでも付けられたのだろう。
ピアスのようについていて、取り外そうとすると、痛いのだろうか。
体を控えめにねじらせ、膝の上から逃げる。
元来兎は凶暴らしいが、どうやらこの兎は躾が行き届いているようで僕に危害を与えようとしない。
それどころか、その鈴に触れること以外には全て無抵抗だ。
初めから上下関係が分かっているようだ。
この賢い兎が唯一僕に抵抗する原因に敬意を込め
この兎に
「鈴(りん)」
と名づけた。
僕が鈴と戯れるようになってから、毎回、毎回、草壁哲矢が驚くような目で見てくる。
そろそろ咬み殺しておこうか。
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雪兎(月兎)(プロフ) - ユズナ様、ご指摘有難うございます。修正いたしました。 (2015年10月1日 20時) (
レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
ユズナ(プロフ) - 三十三片、うつ伏せの状態をうつ伏せにするっていう謎の描写が… (2015年10月1日 20時) (レス) id: 3fdd76a3cc (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(月兎)(プロフ) - 1807(銀)様、コメントありがとうございます。そろそろ二期に･･･ (2015年2月2日 0時) (レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
1807 - 銀の名を変えました〜鈴ちゃん、強いなぁ・・更新楽しみにしています (2015年2月2日 0時) (レス) id: 917ddba170 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎(月兎)(プロフ) - 銀様、コメントありがとうございます。理由があって人間のままです。マシマロ類の柔らかさが好きです、個人的に。 (2015年1月18日 11時) (レス) id: 50f4ecb5a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪兎(月兎) | 作成日時：2014年9月15日 14時
