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あの日…

Aが家出した日から数日経った、夏休み最終日。









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「Aちゃん、元気でね。」









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もともと、Aは夏休みまでいると言っていたから、

すぐにいなくなることは分かっていた。









だから、別に寂しくなんかない。

それに…









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『お世話になりました』









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あの日以来、Aは筆談をするようになった。

ほんの少しだけど、笑うようにもなった…









“感情”を出すようになった。









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「じゃあ侑李、母さんもう仕事に行かなきゃならないから。

Aちゃん、またいつでも来てね。」









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その言葉に小さく頷くA。









母さんは、そんなAの頭を撫でて

慌ただしそうに家から出て行った。









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侑李「ふふ…母さん忙しそう。」









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柔らかいAの表情。

玄関先にいるのは、僕とAだけ。









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僕も、Aといて

ずいぶん笑うようになった気がする。









それはAのお陰か分からないし、

たまたまかもしれない。









だけど……









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侑李「はい、あげる。」









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隠し持っていたノートサイズの白いボードを

Aに渡す。









ボードを受け取って、目をぱちくりさせるA。

僕はクスリと笑って。









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侑李「それなら紙がなくても書けるし、

泣いたとき、文字が滲まないから平気でしょ。









良かったら使ってよ。」









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ニヤリと口角を上げて

イタズラに笑ってみせる。









Aは口元をムッとさせて、

ペンのキャップを取り、文字を書いた。









.









『余計なお世話』









侑李「余計なお世話って…」









.









一番最初に書くのが、

そんなことってねぇ。









可笑しくって、また笑ってしまう。

そんな僕に、Aはまたぷっくりと頬を膨らませて。









だけど、表情は穏やか。

Aは靴を履いて、振り向いた。









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侑李「またね。」









.









別れの言葉はたったの一言。

それだけで充分だった。









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“またね”って言っちゃえば、

本当にまた会えるような気がしたから。









それにこの時、Aもボードに

書いたんだよ。









.









『またね』









『ありがとう』









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ただのおたく(プロフ) - めちゃくちゃ感動して、最後の方号泣でした...。知念さんの愛し方というか、好きの伝え方とか、不器用で...でも誰にも負けないぐらいの優しさが込められてて切なすぎました。こんな素敵な作品に出会えて良かったです。私にとってとても大切な作品になりました。 (5月22日 23時) (レス) @page50 id: 78e45d5fd1 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - kaka4570aさん» このお話の知念さん、本当に一途でしたもんね。まりもも書いていて切ないと思ってしまいました 笑 そう言ってくださり、とても嬉しいです。新婚生活、想像しただけでにやけてしまいます 笑 応援ありがとうございます(*^^*) (2019年8月12日 18時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
kaka4570a(プロフ) - 知念さんの一途さに知らぬ間に久し振りに占ツクを読んでて泣きました、思ってる事を中々言えない知念さんへ切なさ感じたりドレス姿を一番に見せた主人公ちゃんにも感動しました、新婚生活など見てみたいなぁなんて思ってしまいました(汗)これからも応援してます! (2019年8月8日 1時) (レス) id: 372fe47b6f (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 知念菜々さん» ありがとうございます!このお話の知念くん、めっちゃ一途でしたもんね。知念くんver.ですか……今のところ予定はありませんが、検討しておきます! (2019年7月8日 23時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 侑涼‐あゆり-さん» ありがとうございます! 前作も今回も読んでくださりありがとうございます(*^▽^*)結婚式のシーンはまりもの理想なので、喜んでもらえて嬉しいです 笑 学生生活頑張ってきます! (2019年7月8日 23時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まりも | 作成日時:2019年6月18日 21時

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