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言葉が出なかった。
下唇を強く噛んだ。
Aは文字を書き終えると、
利き手で紙をぐしゃぐしゃにした。
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今目の前にいるのは僕と同い年の女の子。
たった、中学生の女の子。
そんな子が、僕より小さな体で
耐えていたんだ。
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侑李「…っ。」
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じわり。
Aの目が濡れた。
ソレはやがて滴となり、
ボロボロと涙を溢れさせ。
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止まることを知らない涙は文字を滲ませ
ぐしゃぐしゃの紙を濡らしていく。
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「…っ、っ…!」
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嗚咽を出すことなく、
ただ泣き続けるA。
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ずっと耐えて、耐え続けて出した答えが
"感情を押し殺すこと"だったのかもしれない。
それで上手くいく術を
見つけたのかもしれない。
だけど…
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侑李「……」
.
無言のままAに近づく。
目の前には、肩を震わせている小さな女の子。
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"こんな時大貴なら"って、
何度思っただろう。
だけど、僕は冷たい人だから。
大貴みたいに明るい人じゃないから。
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何をしてあげればいいのか分からないし、
何て言葉をかけてあげればいいのかも分からない。
慰め方なんて知らなくて、
同情したいわけでもない。
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ただ、少しでも寄り添いたいと思った。
守りたいと思った。
だから…
僕はその小さな女の子をそっと抱きしめた。
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「…っ!」
.
Aは抵抗した。
何度も、何度も抵抗したけど、
僕は離さなかった。
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「っ、っ……!」
.
とめどなく溢れる涙が落ち着くまで。
少しでも癒したくて…
無言のまま、僕はただ
Aを抱き締め続けていた。
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そして、この時誓ったんだ。
"何があろうとAを守る"って…
馬鹿にされようと、
まだ子どもだろうと、関係ない。
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ただ、Aを守ると決めた。
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ただのおたく(プロフ) - めちゃくちゃ感動して、最後の方号泣でした...。知念さんの愛し方というか、好きの伝え方とか、不器用で...でも誰にも負けないぐらいの優しさが込められてて切なすぎました。こんな素敵な作品に出会えて良かったです。私にとってとても大切な作品になりました。 (5月22日 23時) (レス) @page50 id: 78e45d5fd1 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - kaka4570aさん» このお話の知念さん、本当に一途でしたもんね。まりもも書いていて切ないと思ってしまいました 笑 そう言ってくださり、とても嬉しいです。新婚生活、想像しただけでにやけてしまいます 笑 応援ありがとうございます(*^^*) (2019年8月12日 18時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
kaka4570a(プロフ) - 知念さんの一途さに知らぬ間に久し振りに占ツクを読んでて泣きました、思ってる事を中々言えない知念さんへ切なさ感じたりドレス姿を一番に見せた主人公ちゃんにも感動しました、新婚生活など見てみたいなぁなんて思ってしまいました(汗)これからも応援してます! (2019年8月8日 1時) (レス) id: 372fe47b6f (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 知念菜々さん» ありがとうございます!このお話の知念くん、めっちゃ一途でしたもんね。知念くんver.ですか……今のところ予定はありませんが、検討しておきます! (2019年7月8日 23時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - 侑涼‐あゆり-さん» ありがとうございます! 前作も今回も読んでくださりありがとうございます(*^▽^*)結婚式のシーンはまりもの理想なので、喜んでもらえて嬉しいです 笑 学生生活頑張ってきます! (2019年7月8日 23時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2019年6月18日 21時