78 オレンジの記憶 ページ26
テーブルをデッキに出し、陽を浴びる
あぁ、暖かい
妹は金髪の男の子に膝を借りて眠り、弟はテーブルで本を読む
じゃあ30分くらい休憩を、と言いワタシも休息に入った
あんまりにもふりかかる陽が暖かいものだから、つい目を閉じてしまったワタシ
その瞼の裏に、鮮明に広がっていく記憶
焼け落ちていく我が家と、使用人たちの声
父や母……愛しい兄弟姉妹も煙に巻かれていく
上から降る声の主は、光と共に降りてきて
？「これで思い残すこともないだろう」
あぁ……確かに、そうです
この日、私の中から愛が消えて
貴方への怨恨だけが残りました
籠には私と同じように囚われた鳥たちがいましたが、みな観ずっていました
なんと胸糞悪い
貴方から逃れることはできないと諦観していた鳥の中で、ワタシは希望を夢見ていました
光を見るワタシは貴方のお気に入り
そんなワタシのせめてもの抵抗
毎日、籠の中でワタシは貴方を思いながら謳います
しかしそれは虚、嘘だったのを貴方は見抜いていましたね
？「お前の声は美しいが、嘘を謳うお前には飽き飽きだ」
神は、愛を奪われ何もないワタシに、これ以上どんな試練をお与えになるのですか
自分勝手な貴方は、籠ごとワタシを捨てました
地に落ちたワタシは見つかることもなく、長い年月を1人で過ごします
祈りだか、呪いだか知らないが
ワタシの籠は普通の人間には見えなかったらしい
檻の中の罪人のように
死ぬことも許されないまま、永遠をこの中で過ごすのかと解ると
気が狂わないようにワタシは色々試しました
空を飛び、幻を夢見て、昔読んだ本を思い出しその中で暮らす
永遠……時間はたっぷりあると疑いもしなかった
でも、その考えはいい意味で崩れた
あの日
いつものような日だった、いや時間の感覚も分からなかったからいつかはよく分からないけど
君たちが現れた、籠を開けてくれたんだ
飛んで跳ねて、喜んださ
口角が上がるのを抑えられずに、叫んで走り回ったさ
お詫びなんて言ったけど、ちょっと違うね
ゆっくり目を開け、隣に座る弟と眠る妹を見る
サクラ「…どうかした？」
「うぅ〜〜ん……」
カナリヤ『いいや、なんでもない』
目に入れても痛くないくらい、君たちを愛してる
ワタシを見つけてくれてありがとう…愛しい兄妹たち
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作者名：夏至 | 作成日時：2018年1月18日 17時
