16 名無し宅 ページ18
名無しの先輩side
後輩の部屋は、とにかく物が少なかった。
質素なリビング。
そこにぽつんと置かれたソファーへ、担いでいたこの家の家主を寝かせる。
「っしょ・・・んで?風邪か?
ほんっと体調管理ぐらい自分でしろよ・・・」
『っ、すんません。熱は無いっす』
『・・・っ、あれ。先輩?』
いつもより少し細い声を溢した俺の後輩の目は虚ろで、目が合っているのかいないのか分からない。
バイトに来なかったアイツの家を訪れて、玄関から出てきたのは、普段からは想像もつかない程弱々しい姿の後輩だった。
「ちょ、お前どうした・・・」
言い終わるより先に、アイツの膝が折れた。
バランスを崩した体をとっさに支えてやれば、俺と同じタッパがあるとは思えない軽さが乗ってきた。
ほぼ力の入っていない腕を自身の肩に回し、多少の申し訳なさを胸に無断で家へお邪魔する。
「おい、勝手に入るぞ。いいな」
していたか分からない返事は、俺の耳に届かなかった。
そして今に至る。
「飯は?どうせ食ってないだろ。
台所借りていいなら何か作るけど。
てか連絡入れろよ」
か細い声が返ってくる前に、俺は冷蔵庫を物色。
『連絡なら入れましたって・・・あ』
テーブルにあったスマホを見て呟く。
『送る先間違えた・・・はぁ。
ってか、飯もいらないっす・・・』
うわ。ほぼ何も無え。普段何食ってんだコイツ。
身長に見合わなかった体重にも納得が行く。
かろうじて残ってた茶漬けの袋と少量の米を見つけ、後輩の返事をスルーしながらポッドに電源を入れる。
「今茶漬けの用意だけしてる。湯沸いたら食え。
ほれ、水」
かろうじて残っていた冷蔵庫の水を1本持ってきて、ソファーでぐったりしている後輩に飲めと促す。
『・・・ありがと、ございます』
のそのそと起き上がり、遅い動作でボトルに口を当てる。
少しだけ飲んで、もうやめてしまった。
さっき電源を入れたポッドから、湯が沸いたことを知らせるように音が鳴る。
最近の電化製品って何でもかんでも早ぇな。
炊飯器に少し残った米を、乾燥し終わってた茶碗につぐ。
米が冷たいのはしょうがないか。湯を入れれば温まる。
「ん。少しでも胃に物入れとけ。残したら俺が食う」
背もたれに全体重を預けてぼーっと座っていたソイツに、茶碗とスプーンを手渡す。
「・・・っし、さてと。
それ食ったら、無断欠勤の言い訳聞いてやるよ」
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オデミカーン - んぉぉぉぉぉお、おかえりなさい!!!!!!!!!() (2021年7月23日 19時) (レス) id: 3f067938ed (このIDを非表示/違反報告)
しらゆきくん@生気 - おまえこうしんひんどやばいぞ(こいつもやばいから人のこと言えない) (2021年4月18日 2時) (レス) id: fdd6a104f9 (このIDを非表示/違反報告)
赤鬼__(飲んだ)(プロフ) - みんなただいまあああ。ほんとすませんまとめて返します。懺悔。これからまた頑張るよって!! (2021年4月2日 10時) (レス) id: 908bcddbfb (このIDを非表示/違反報告)
セイキ - おかえりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! (2021年4月1日 18時) (レス) id: b9fbeaaf6d (このIDを非表示/違反報告)
しらゆきくん@雪降り - 遅めのおっかかかかかかかかかかかかかかかかかえりいいいいいいいいいいいい!!!← ふっ....君を待ってる間、僕は掛け持ちを増やし((((((強制終了 (2021年3月5日 20時) (レス) id: aba220bb4a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:akaoni- | 作成日時:2020年9月21日 12時