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103話 ページ7

一歩、その足を彼女に向かって進めた。距離はさらに詰められて、彼女の顔は目前にある。
彼女は多少動揺したように身じろぎしたが、そんなことはお構い無しだ。



「その薬、もしかして以前から準備していたものなのでは?」

「そ、うだけど、だからなに。」

「実はね、青酸カリに含まれるシアン化カリウムは二酸化炭素に非常に反応しやすいんですよ。」

「……え?」



唐突に始まった、まるで学校の授業のような話は彼女の意表を突くには充分だ。人差し指をぴんと立てて、いかにもといった雰囲気で彼女に迫る。
周りの観衆も、とても興味深そうにこちらを見つめていた。



「シアン化化合物は二酸化炭素と反応すると炭酸カリウムとなるんです。これには毒性がありません。」

「そ、そんなこと…」

「そしてその反応は今貴方がビンの蓋を開けた状態でも続きます。」



空気には二酸化炭素が含まれてますからね。

ぎょっとしたように目を丸くして、彼女は自分で握りしめた小ビンを見つめた。
その中の白い粉は僅かな山となってそこに残っているが、果たして彼女には今それがどのように映っているのか。それはわからない。

シアン化カリウム、青酸カリは確かに猛毒である。しかし、かつての小説で扱われてきたような「便利な毒物」では決してないのだ。
彼女が薬を手に入れてからどのくらいの時間が経ったかはわからないが、彼女は彼の浮気がどうであれ最初から死ぬ気だったわけだ。もしかしたら非常にタチの悪い女で、ことある事に死んでやると脅す虚勢ばかりの構われたがりかもしれない。
だが経緯ははっきり言ってどうだっていいのだ。知ったこっちゃない。けれど恋愛は時として人の本性を浮き彫りにする。その中でこんなものが使われていい理由にはならない。

事前に準備し、管理する。毒物というのはとても繊細だ。彼女の我儘に振り回されてくれるほど、便利な存在ではない。



「青酸カリが反応を起こす時に確かに毒ガスも発生しますが…ここは外ですしね。致死量まで摂取するのは到底不可能です。」

「だったら、毒じゃなくなる前に飲めば……!」

「飲んで死ぬ場合、それじゃあ量が足りません。ひと舐めでもすれば死ねるような魔法の薬じゃないので。」



彼女の体重を大体50キロ前後と仮定しても、必要な量は250ミリグラムほど。ビンの中の分では完全に足りていない。それに、これは分解されていないことを前提としている。他にも要素は多々あるが、確実に死ねるとは言えない。

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作品ジャンル:アニメ
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m(プロフ) - fです。いつでも気長に更新待っています! (11月13日 5時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - fさん» 本当に泣きました。ありがとうございます。がんばります! (4月20日 9時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
f - 何度も繰り返しているからこんな素敵な作品になるんですね!この作品に出会えて、読むことができるなんて幸せ...最高.....!好きなのでどれだけ掛かっても大丈夫ですよ!頑張ってください! (4月17日 22時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - fさん» f様、度々応援のお言葉ありがとうございます。自分は一度に一気に更新することが苦手で、何度も何度も編集を繰り返してしまうのですが、そのお言葉にとても救われました。ゆっくりにはなってしまいますが、これからもよろしくお願いします。 (4月17日 1時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
f - 久々の更新でわくわく...!!気長に待ってます!頑張ってくださいいつも応援してます! (4月15日 2時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そうる | 作成日時:2018年1月9日 17時

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