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番外編【記念リクエスト】 ページ27

寂しい、と昔はよく思ったものだ。
兄や知人のおかげで仕事には困らず、知る人ぞ知る環境内でひっそりと事務所を構えていた時期。しかしまだ反抗期や思春期を終えたばかりの俺には、やはりふとした時に孤独を感じる瞬間があった。
大反対を受けながらも反抗期の延長戦で始めた商売である。俺もまだ十代で、一人前には程遠いとよく知り合いには笑われていた。

客は客、友人ではない。
そんな普段当たり前に思っていることが、一年に一回くらいのペースで当たり前にこなせなくなる。



「それで?珍しいね、君が僕を呼ぶなんて。うちに来てくれる気になったの?」

「んなわけねえだろ。飯を作りすぎただけだっつーの。」

「だからってわざわざ直通で電話する?貧乏性の君が?」

「別に要らないなら帰っていいぞ。」



ちぇ、かわいくないなあ。
露骨にむずかってみせる友人、イヴァンの皿に、俺はたくさんのシチューを盛り付けてやった。その体ならこれくらい余裕であろうという嫌味も込めて。
仕事の依頼がよく来るようになり、俺が唯一境界線を取り払った男からの軽いジャブには慣れている。本気なのか冗談なのかよく分からない誘いは俺たちにとって定番の流れなのだ。こいつの強引な押しは顔見知りになった頃からずっとである。おかげで自ら課していた律格は容赦なく破壊された。しかし今ではそれが俺の救いなのもまた事実である。
彼は初めてらしいシチューをしばらくじろじろと眺め回し、次に籠に並べられたパンを見つけるとそれを一切れ分手に取る。



「ねえ、これなあに?つけて食べればいいの?」

「ああ。まあビーフストロガノフみたいなもん。」



恐る恐るといった様子で彼はシチューを掬うので、なんだか焦れったくなってしまって、俺は先にパンを浸して口に放り込む。うん、なかなかの出来。
もぐもぐと咀嚼する俺を見て、イヴァンは意を決したのか一気に口へとそれを詰め込んだ。



「…!美味しいじゃない!」

「だろ。ほらもっと食ってくれ。余ったら勿体無いから。」

「ふふ。今日はそういうことにしておいてあげる。」



にこにことパンを頬張る彼がなんだか子供のようで愛らしい。だがそれでも俺の思うところは筒抜けなのだろう。
暖炉で炎がぱち、と音を立てている。俺たち二人の間、会話は決して多くはなかったが、なんだか心が満たされる気分になる。家族と離れて暮らす寂しさが霧散していくのを感じる。

たとえ刹那的な幸せであろうとも、俺にとっては宝物だった。

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設定キーワード:男主 , ヘタリア , APH   
作品ジャンル:アニメ
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m(プロフ) - fです。いつでも気長に更新待っています! (11月13日 5時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - fさん» 本当に泣きました。ありがとうございます。がんばります! (4月20日 9時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
f - 何度も繰り返しているからこんな素敵な作品になるんですね!この作品に出会えて、読むことができるなんて幸せ...最高.....!好きなのでどれだけ掛かっても大丈夫ですよ!頑張ってください! (4月17日 22時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - fさん» f様、度々応援のお言葉ありがとうございます。自分は一度に一気に更新することが苦手で、何度も何度も編集を繰り返してしまうのですが、そのお言葉にとても救われました。ゆっくりにはなってしまいますが、これからもよろしくお願いします。 (4月17日 1時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
f - 久々の更新でわくわく...!!気長に待ってます!頑張ってくださいいつも応援してます! (4月15日 2時) (レス) id: 4ca17f9031 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そうる | 作成日時:2018年1月9日 17時

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