検索窓
今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:21,046 hit

122話 ページ28

「ルートヴィッヒ・バイルシュミットだ。ホンダ、この度は感謝する。」

「いえいえ、こちらとしても美味しいお話でしたので。」

「ヴェ、これ本物のキモノ?すごいね、初めて見たよ!」

「こら、フェリシアーノやめんか。」



ふわりとい草の香りが漂っている。菊には既に慣れた香りであったがどうやら外からの客には新鮮な物であったらしい。そわそわと落ち着きのないまま、彼ら、特に目の丸い可愛らしい青年は忙しなく視線や身体を動かして物珍しそうにしていた。挨拶をした男、ルートヴィッヒが首根っこを捕まえてもそれは変わらないままである。

本田菊と来客は中華系マフィアである王耀の家の客間にて顔を突き合わせていた。菊のいる国に来るには些か時間がかかりすぎるため、大陸を拠点とする耀が仲立ちし、場が設けられたのだ。畳、掛け軸、さらには書院窓まであるこの部屋は、菊の本国の実家の造りとほとんどが同じ物だ。耀が昔面白がって作らせたらしいのだが、今回敢えてこの客間を選んだのは菊を配慮してのことらしかった。あの人はいつまでも私を子供扱いする。

ヴァルガスから武器の発注があったのはつい二、三ヶ月前のことである。元々は王耀一家への依頼であったのを、主直々の判断により菊の方へと回された。王耀は広く大きく商売を受け持ってもいたが、それに反して菊の一族は昔から裏では武器専属の商人である。適任には間違いがない。途中数度の追加発注を経たものの、無事にきっちりと納品を済ませた。大口の依頼で久々の菊も緊張したものだが、思っていた以上の反響が返ってきた。

菊の家では全ての武器は品質や使い易さを重要視する。全て菊により目利きされた数多の武器たちは、多少値段が張りはすれども火力に優れることは勿論のこと、得意先より手に馴染むと評判であった。それ加えて納品の期日は必ず遵守される。そんな当たり前のことも含めて、どうやら先方は今回の取引を非常に気に入ってくれたようだった。そして、今後の付き合いを見越して挨拶をすることとなった次第である。

フェリシアーノだよ、と青年は名乗った。まだ年若く見える彼がかのヴァルガスファミリーのトップであると聞いた時には、流石の菊も酷く驚いたものである。この血も憎悪も知らぬような男が、あの。

用意させた茶を彼らの前に差し出す。それも慣れなかったのであろう、二人はそうっと口元を寄せてひと口分喉に流すと、その苦味になんとも言えない顔をして見せた。

123話→←番外編【記念リクエスト】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (93 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:男主 , ヘタリア , APH   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ミチル - ID違うんですけど一応同一人物です、、、! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメからしばらく経ちましたが未だに見に来てます。とても面白いし、この作品の続きを楽しみにしている人もいると思います!私はいつまでも続きを待ってます! (2022年9月15日 7時) (レス) id: 4511edeaa7 (このIDを非表示/違反報告)
ミチル - 初コメ失礼します。凄い面白くてあっという間に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2022年8月3日 23時) (レス) id: e447b7200f (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 山口さんさん» 四年も前の二次創作に心温まるお言葉をくださり、ありがとうございました。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
山口さん(プロフ) - ただただこのそうるさんのひとつひとつの表現が好きです (2022年4月30日 2時) (レス) id: 218fc2ba1d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そうる x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。