【男主】unità difettoso！【APH】

31話 ページ33

「それでさ、最近はずっと知り合いの家に泊まったりしてたんだけどね、いつまでもそういう訳にはいかないし。」

「それでうちに？」

「そうだよ！フランシスんとこに行ったら君の名刺があったから。」



知り合いなんだろ？とアルフレッドは首を傾げる。
ああなるほど、マスターには確かに名刺を渡している。そこ繋がりかこいつ。
目の前の客人はソファに思い切り体を預けながら、カップに残ったコーヒーをぐいぐい、と飲んでいた。こいつが初めての依頼人というのか。なんとなくガックリしてしまう。しかも内容は幽霊の正体探し……つーかこいつこの外見で幽霊怖いのかよ。
それでも仕事は仕事、受けない理由は無いのだ。この手の依頼だと原因の相場は決まったようなものだが。
床下からの音、窓から見えた白い影、伸びた人影…一番最初の問題には大体の検討がつくが、残りはまだわからない。ヒントになるようなキーワードはちょこちょこあるけれど。
アルフレッドの方に向き直り、仕方ないといった様子で手を上げる。俺は正義の探偵様だ。解けない謎は物理で解決してきた俺に、できないことはないのだ。
初見の恐怖心は幾らか抜けていた。



「とりあえず調査の代金、それに当たるにしての交通費、見事解決したならその報酬は必ず支払ってもらうからな。例えお前が学生だろうと、」

「それは勿論だよ！お金ならたんまりあるからさ、早く解決してくれ！」

「お、おう……」

「これでやっと俺も家に帰れるんだぞ！」



いやまだ受けるとは言ってないんだが。
報酬の話をしてもあっさりと受け入れられたなら、これはいよいよ断る理由も無かったのだが、アルフレッドは既に目の前で狂喜乱舞しているから今更何も言えない。後で金額見てごねられないことを願うのみである。
時刻はまだ昼過ぎ、これから活動するにはおあつらえ向きと言える。ならちゃっちゃと片付けてしまいたい。学生のガキのお守りは骨が折れる。
俺はあまり自分より年下の子供の扱いが上手くないから。兄貴ならきっと上手くやるんだろうけど。

俺はソファから立ち上がって裏の本宅から鞄を一つ持ってきた。出かける時の荷物なんか大抵代わり映えはしない。財布にハンカチ、軽いおやつ、それと手帳に、虫眼鏡は小さいものを。いつも肩から斜め掛けのできるバックに詰め込んで、大体家の方にそのまま放置だ。

きょとんとするアルフレッドを無理やり立たせて、表へ出る合図をした。




「ほら、お前の家に行くぞ。」

32話→←30話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す