【男主】unità difettoso！【APH】

30話 ページ32

「えっと…？アルフレッドさん、はご自宅で、その…幽霊？を見たと。」

「そうなんだよ！最近夜は風が強いじゃないか。最初は風かなんかだと思ってたのさ。」



アルフレッドを応接用のソファに座らせてからコーヒーを二人分用意して目の前に置く。彼はそれを少しだけ飲んだあと、事情を話し始めた。

アルフレッドは七番通りと名のついた通りの並びに建つ一軒家に住んでいる。この街から列車で二駅離れた大学に通い、部活ではラグビーをやるごく一般的な男子学生。好物はハンバーガー。嫌いなものは美味しくないもの。そんな彼が異変を感じ取ったのはつい最近のことだったらしい。
その日もラグビーを終えて帰宅。最近妙に強い風のせいで窓がガタついていたのを煩わしく感じて、1階の窓にはシャッターを下ろしてその日の夜を過ごしていた。ところが、何やら床下から「こん、こん、」と音がする。よくよく耳を澄ましてみると、キィといった高い音も聞こえた。それは止まることなくずっと鳴り続けている。この家にネズミが出たことは一度もないし見たこともないから、これはきっと別の何かの……
そう考えたところで、彼は昨夜見たホラー映画を思い出してしまった。たまにはいつもと違うものをと思って、ゴーストが沢山出てくる映画を観てしまったのだ。ちなみにその映画の主人公はみんな死んだ。
ぶるぶるっ、と背中に悪寒が走る。そんなはずはないと思うものの、怖いものは怖かった。だから2階へと走って逃げたらしい。2階には彼の寝室があるのだそうだ。
息を切らしながら廊下を走って寝室に駆け込んだ。カーテンをしていない窓の向こうには黄色い月が輝いているようだが少し雲がかかってぼんやりとしている。彼はカーテンを閉めようとその窓に近付いた。
その時、ごう、と風が吹く音がした。どうしたのかと外を見ると、彼は目撃してしまったらしい。視界の右端、窓の右上のあたりにある白い何かの影を。

慌ててカーテンを閉めないで自室の扉に駆け寄った。この部屋はもうダメかもしれない、別のところに行かなきゃ、と。
すると、すう…と自分の影が映る扉のすぐ脇に、何かが伸びてきたのが見えた。恐る恐るそれを見ると、それは人の影であったのだそうだ。



「その日は怖くてどうしようもなくて、結局1階のリビングのソファで寝たんだ。次の日の朝は急いで起きて学校に行ったよ。」

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