【男主】unità difettoso！【APH】

20話 ページ22

心機一転、拠点を構えた俺がまず一番にしなければならないこと。それはこの家の掃除だった。


「…やっぱり何度見てもすげえ…」


ぽつりと思わずそんな言葉が漏れる。そのくらいには凄かったのだ。

そこは見学に1度訪れた時と変わらないまま。長らく放置されたと思われる家具には蜘蛛の巣が張っているし、他には軋む床に剥がれた壁紙。そして固く閉まって動かない扉。極めつけは天井までもある本棚とその本たち。もれなく本来あるはずの色を、白い綿埃でぼやかしていた。
これは誰でもため息ものだと思う。圧巻ですらある。足を踏み入れたら高く募った埃のせいで足跡がついた。

拠点を探す際不動産屋に言った条件は幾つかあるが、そのうちの一つに値段も含まれていた。立地や交通の便を気にしなかった訳では無いが、俺は何よりも家が安いことを最優先事項にした。何故なら手持ちの金額は膨大といえども限りがあったし、安定した収入もまだなかったから。
不動産屋の店主は暫し思案していたが、しばらくして店の奥の方から1冊の紙束を持ち出してきて、俺に見せた。
「立地も日当たりも最悪ですが、中にある前の住民の残した物をあなたの方で処分してくださるなら、多少は安いお値段にしましょう。」
それは願ってもいない提案で、店主から詳細の説明をされた後、俺はすぐにその家を買うことに決めたのだ。一般的な価格の約三分の二の金額で。そして後日下見もした上での今日である。今更文句も言わない。
それに要は掃除さえしてしまえばあとはこの家具たちを自由に使えるということだ。多少古いがまだまだ現役の彼らを買い直すとなっていたら、それこそ馬鹿にならない金がかかる。

背負っていた荷物を置いて腕捲りをした。肺の中の空気を一気に吐き出すように息をつく。

まずは家具とゴミをまとめて、それからホコリを落とす。やることは沢山あるんだ。



「目標は1週間だな。」



気を引き締めていこう。

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