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19話 ページ21

あの恐怖の夜からもう数ヶ月が過ぎようとしていて、それなのにまだ俺が生きているところを見ると、どうやら神は死亡フラグの回収を見送ったらしかった。

こちらは街の西側にあるホテル。窓から差し込む光は太陽の存在を俺に知らせているから、今日は素晴らしく天気の良い日なのだろう。清々しい朝だ。
顔を洗って、前日の夜に買ったパンを食べて、歯を磨いて、そしてベッドを整える。決して綺麗で真新しい訳では無い宿であったが、木のぬくもりがある、どこか生まれの地の暖かさを思い出させる場所だった。とても気に入っている。

そんなホテルに滞在して、今日俺はようやくチェックアウトの日を迎えていた。

あの後、まだあまりある金を持って早急に空き宿を探した。宿に泊まるぶんには手形もなにも必要はなかったから、長期でも部屋を貸してくれる所を探し出し(それだけ料金は割増になったが)、なんとか寝床を確保したのだ。
ホテルの主人であるおばあちゃんはとても優しく、3ヶ月を越えてもまだ居座る俺を家に帰れない理由があると思ったようで、何かとことある事に美味しいご飯を差し入れてくれた。俺はそれを冷凍しながら少しずつ食べた。資金は節約しなければならなかったからだ。

俺は今日ここを出て、新居へと向かう。
その新しい拠点を探すために、カジノで当てた金は必要最低限を残して全て使った。おかげでこじんまりとしたものではあるが、とても俺好みの部屋を見つけたと思っている。もうその時には制限期間は過ぎていたから、必要最低限の書類を提出するのみで済ませられた。

荷物は元から自力でまとめることができる程度の大荷物。すぐに支度は終わる。一通り部屋の中を片付けたら、お別れの時間だ。

ロビーに出るとおばあちゃんがいた。カウンターに鍵を置く。


「お世話になりました。」


そう伝えると、その人は柔らかく微笑んだ。








大通りを通って右に曲がる。その次は左。そしてそのまま真っ直ぐ。
少しだけ入り組んだ路地を進んでいけば、見えてくる場所。さながらそこはまるで小説の中の風景である。

左右にはアパート、向かいには黒ずんだ家の壁が見える。日光はほんの僅かに除くばかりで、火の消えた街灯が静かに眠っていた。

レンガ造りの道の行き着く場所には、薄暗く埃っぽい路地の中の、小さな戸建ての家がある。
今日からそこが、俺の新しい家となるのだ。

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そうる(プロフ) - 表現や関係性、トリック等に山のように修正箇所がありますし、名前変換の修正が不充分な箇所もあるので土に埋まりたいほどなのですが、それでも今なおコメントしてくださっている方、地中から発掘してくださった方にこの場を借りて御礼申し上げます。 (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - 読んでくださっている方、ありがとうございます。古に拙文を書いた当人です。四年前のテキストに耐えかねアカウントを消してしまったため、この作品の細かい箇所の修正がもうできません。(パスワードを忘れてしまいました) (2022年7月9日 22時) (レス) id: 4692de9cf0 (このIDを非表示/違反報告)
そうる(プロフ) - のぁさん» 貴重なご意見ありがとうございます。とても参考にさせていただきました。弱い、という言葉では主人公を表すのにいまいちしっくりきていなかったので思い切って変更することにしました。続編の方でもお付き合いいただければ幸いです。 (2017年10月22日 20時) (レス) id: e4ea35986a (このIDを非表示/違反報告)
のぁ(プロフ) - 続編おめでとうございます!題名の事ですが、私としては題名にこだわり等はないので変わってもそのままでも、と思っています。もし作者様が今の題名より素敵な題名を思いついたのであれば、それに変更する。というのでもいいと思います! (2017年10月22日 17時) (レス) id: 716e994b36 (このIDを非表示/違反報告)
英智君尊いよぉぉぉぉ(((殴 - あっそうなんですね。わかりました〜書き直しが出来たら教えてください♪ (2017年6月17日 18時) (レス) id: 2f00a5668f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そうる | 作成日時:2016年12月12日 9時

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