【黒バス】霧崎第一高等学校恋日誌【短編集】

【原一哉】--戻れない２-- ページ22

「ごめん………ごめんね……」




声が震えた。





「何で謝んの？俺の事なんてもうどうでもいいっしょ。別れるんだからさ。






それとも最後の情け？自分は最後にイイコちゃん演じるんだ」






一哉の言葉が胸に深く突き刺さった。




どうでもいい訳ないのに。




少し前を歩く一哉。




見慣れていたその後ろ姿。




近くに感じてた。




でもそれはもう過去のことで……





今はもう遠い。
　




「じゃあ、友達として男バスマネージャーとしてこれからは宜しくね、城ノ内さん」




「……うん、宜しくね。原くん」




「俺こっちだから、バイバイ」




「うん。さよなら、またね」






最後くらい笑っていたい。






………けどちゃんと笑えていたかな。



別れた直後に笑う女ってどうなんだろう。





けど最後だもんね。




一哉の背中がどんどん遠くなっていき、やがては見えなくなった。




「胸が痛いよ……」




こんな苦しい痛み体験した事ない。




私の一哉への想いはどうやら、自分が思っていた以上に大きかったみたいだ。






私は家までの道のりを歩き出す。




本当にバカだよ、私は。




肝心な事……伝えてない。




「これからなんて…ないんだよ…」




涙が止まらない。




次から次へと目から溢れては頬を伝って地面に落ちていく。





私はその度にセーターの袖でそれを拭った。




セーターの袖が濡れていくけど、もう気にしない。




──霧崎の制服を着るのも今日で最後だから。









　




「ただいま」


「あらお帰りなさい。学校の皆にはちゃんとお別れ言った？」


「うん」


「荷物はもうまとめてあるわね？

今夜１０時にはここをでるからそれまでに最終確認しとくのよ？






もうここには帰ってこないんだから」




そう、私達は北海道へ引っ越す。





母が言っているのは荷造りの事。




「分かってるよ」



私はローファーを脱ぎ家に上がる。



自室へ着くと



「…一哉…」



写真が目に入った。



それは一哉との思い出の写真。




それを見たらまた胸が苦しくなって涙が頬に伝った＿＿。



「ごめんね……約束守れなかった…」





『これからはずっと一緒だかんね！約束だよ！』



『うん！』

　


私はその写真の前で泣き崩れた。




久しぶりに声をあげながら。




どんなに泣いたって一哉は戻っては来ないし、もうどうにもならないけど





私は涙が枯れるまで泣いた。

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