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次に意識が戻った時は、ピッピッピッという規則的な音と白い天井が目に入った。
どこだよここと口に出そうとしたら、口元に何か被せてある事に気付いた。その何かを確かめようと腕を動かすと同時に強い痛みに襲われ思わず顔を歪める。
そして気が付いた。ここは病院で、恐らく自分は事故に遭ったのだと。
そうと分かれば後はもう冷静になるだけで。
記憶にあるのは大きな音が後ろでした後で身体が吹き飛んだという事。だとすれば自分は他人の事故にでも巻き込まれたか。何と運のない話か。
気を失う直前に見えた景色は炎上するバイクだったから、恐らく愛車もおじゃんだ。
ここまで来たらもう生きている事に感謝するしかない。
──遠出だと思ってちゃんとプロテクター着込んでおいてよかったなぁ。
考え事をするのも今の身体には大きな負担な様で、フワフワと緩やかな眠気が襲ってきたので大人しく寝ようとしたところで病室のドアが静かに開く音がする。
寝る気満々で既に目を閉じていたが、折角なので誰が来たのか顔でも確認しておこうと目を開けたらバチリと目が合った。
互いに声が出ないのか暫く見つめ合うだけの時間が過ぎる。
先に動けるようになったのは相手の方だった。
「A……Aが起きた!!」
そう叫ぶとそのまま部屋を飛び出して廊下で大きな声を上げている。
暫くすると医者と看護師数名を伴ってボロボロと涙を流しながら男が部屋に戻ってくる。
「A……ほんとうによかったぁ……」
──兄ちゃん、廊下で大きな声出したら他の人に迷惑だよ。
そう声を出そうとするが上手く音にはならなかった。
その後は医者からまず意識や記憶の確認。次に怪我の状態、病院に運ばれてから1週間目覚めなかった事、どのくらいで回復するか等を説明された。
記憶の確認は頭を強く打ち付けていたから。また大怪我ではあるものの、安静にすれば2カ月もすれば大方完治するだろうという話だった。声が出なかったのは、単純に1週間も眠りっ放しだからだそうだ。
また怪我の具合が良くなってきたらリハビリが始まる。これは様子を見つつ退院後も暫く通う事になるらしい。
それから、数日見て容体が安定したら大部屋に移って欲しいとの事だった。
なんでも、ここはそこまで大きな病院ではないから、急患用に部屋を開けておきたく余程の理由がない限りはそうお願いしているとの話だった。
勿論、どの部屋でも支障は然してないので二つ返事で引き受けた。
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ヘーゼルナッツ先輩(プロフ) - くずをさん» くずをさん初めまして!コメントありがとうございます。そう言って頂けてとても嬉しいです。励みになります。次の更新ごろにはknさん出るんでもう暫くお待ち下さい……! (2020年3月23日 6時) (レス) id: afa2b77f18 (このIDを非表示/違反報告)
くずを - 好きです!もっと評価されるべき!次の更新待ってます! (2020年3月22日 22時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
ヘーゼルナッツ先輩(プロフ) - むむさん» むむさん初めまして!コメントありがとうございます。物凄く元気が出ました。もう間もなく更新致しますのでもう暫くお待ち頂けると嬉しいです! (2020年3月16日 16時) (レス) id: a2d6eb8699 (このIDを非表示/違反報告)
むむ(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します。文章がとても丁寧で彼が出てくるまで全然読めるな…私も全然読むな…という感じなのでコメントさせて頂きました…(?)更新楽しみにしています…! (2020年3月15日 15時) (レス) id: 30887f6f4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヘーゼルナッツ先輩 | 作成日時:2020年3月10日 22時