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機械の起動している音。
コポコポ…という泡の音。
ポチャンとなる水の落ちる音。
それしか聞こえてこない、静かな世界の真ん中で、美しく眠っているAは腕がなくなんとも言い表すことが出来なかった。
真っ白で、細い身体。
透き通るような髪。
目に映るのは、普段見ることの無い姿なのに、なぜこんなに俺は冷静なのかもわからなかった。
「A」
もう一度、君の名前を呼ぶとゆっくりと顔を上げ、そして目を開いた。
厚いガラス越しに目が合って、なんだかパチリと弾けた感じがした。
「黒羽、くん?」
「あぁ」
「メガネ…」
「これは…ちょっとな?」
今は要らないやとメガネをとり胸元にかけた。
1歩ずつ近づいて、ガラスに手を置いた。
「腕…痛かっただろ?」
「…別に」
いつもなら下のはずの目線も今日は上に向いて、変な感じがした。
見下ろされている。
変な感じだ。
ふと、周りを見渡して、白い布と青いものを目に入れた。
殺風景で無機質なこの空間に大事に飾られている青子とお揃いの服と俺のプレゼントした青い薔薇。
「あれ、まだ持っててくれたんだな」
「…あれ?」
「俺があげた薔薇。あそこに飾ってあるやつ」
「…えぇ」
常にAの中に俺らがいると、実感したような気がして嬉しくなった。
「不思議と、あれを見ていると、胸が痛いの」
「ん?」
「涙が出てきたこともある、黒羽くんと、同じ」
「…早く腕、治せよな。そんで、早く青子たちと遊ぼうぜ」
「…わかった。」
疲れたのか、ふと目を閉じたAを見届けて俺は静かに部屋を出た。
哀ちゃんは、「話せたかしら?」と雑誌を読みながら出迎えてくれた。
俺には子供ぶる気は無いのか、
俺が何者なのかを薄々感じ取っているのか、
怖い子だなって思いながらお礼を言ってお暇することにした。
「また学校で仲良くしてあげてね」
「こちらこそ。早く良くなるように、よろしく」
「えぇ、分かったわ」
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御坂ナツキ(プロフ) - 木実こむぎ@Project KZ副隊長さん» ありがとうございます!とても嬉しくて執筆の励みになります!!頑張ります!! (2019年8月19日 21時) (レス) id: 7ae93b89fc (このIDを非表示/違反報告)
木実こむぎ@Project KZ副隊長(プロフ) - はじめまして!少し前から読ませていただいている者です。このお話の独特な雰囲気がどストライクです!これからも楽しみに待ってます! (2019年8月19日 18時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御坂ナツキ | 作成日時:2019年8月14日 21時