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少しずつ岩本さんの所に足を進める。
周りみんなに睨まれてる気がして、足を止めそうになるけど、1歩ずつ1歩ずつ。
ふたりが絶えず話している声が聞こえる距離まできた。
途端に足が鉛かのように重くなって、動かなくなった。
どうしよう、頑張らなきゃ。
なんて思っても、どれだけ動け！ って念じても、私の足は接着剤で貼り付けりたかのように動かない。
「意気地ないな」
ついついひとりごとが出てきてしまう。
「あの、小鳥遊さん」
そんなとき、向こうのマネージャーさんに声をかけられて。
「え、は、はい」
男性なこともあってしどろもどろになってしまう。
「小鳥遊さんって普段からお忙しいですか？」
「まあ、それなりには」
「お休みとかなにしてます？」
「え、？」
「いや、マネージャー同士、交流を深められたらと思って！
」
「連絡先、交換しませんか？」
絶対そんな思惑じゃないだろ、って思うような言葉を投げかけられる。
「いや、あの、そう、いうのは、ちょっと」
詰まりながらも拒否の姿勢を取るも、更に物理的距離を縮めて1歩近づいてくる相手。
いや、近いんだけど。パーソナルスペース。
普通に困って、どうしたらいいか分からなくて、1番近くにいる岩本さんを見る。
まあ、こっち見てないよね。なんて思って、1歩後ずさる。
「連絡先だけでも」
「スマホ出してくれれば僕のやつ登録するだけでも良いので」
「え、いや、大丈夫、です」
だんだんと近づいてくるこの相手に、恐怖を感じ始めた頃。
岩本さんと目が合った、気がした。
「なら、番号教えてくれればそれだけでもいいので」
「あ、いや、だから…」
やっぱり男性は苦手だ。
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作者名：なあちゃむ | 作成日時：2022年4月30日 0時
