異世界から"運命の人"として召喚された運命にあらがう為、塔を登ります。 (ページ8)

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出会いのち別れ3 ページ8

ラヘルから服を借りた。

彼女とは特に背格好が似ているため、彼女から借りた黒のワンピースも特に問題なく切ることが出来た。

『ラヘル！ぴったりです、お洋服までお借りしてしまって...本当にありがとうございます』

「お礼なんて良いのよ。Aとサイズに差が無くてよかったわ！」

ラヘルがにこやかに笑いながら、私の手を握る。
こんなに親身になってくれて、見ず知らずの私に服まで貸してくれるなんて...。

本当に彼女と夜には頭が上がらない、と思考を巡らせていると少し離れた岩場から良いにおいがこちらまで漂ってきた。

「二人とも～！着替えが済んだ？スープが出来たから一緒に食事にしよう！」

夜が少し離れたところから声を張って食事が出来たことを伝えてくれる。

『私...食事までもらっちゃって良いんでしょうか...』

「何言ってるのよA、貴方帰る場所が無いんでしょう？だったら、一緒にいましょうよ」

『ラヘル...ありがとうございます。本当に感謝してもしたりないです...。』

「お礼なんて良いのよ。もう私たち、友人でしょう？さ、夜が待ってるわ！」

ラヘルに手を引かれ夜のもとへ来ると、スープのほんのりと優しいにおいがした。夜が器へスープをよそい、私とラヘルに配ってくれる。

そっと口をつけると、ほっとする味で安心した。

「A、どうかな...？僕も料理を担当したりはするんだけど、ラヘルの方がうまくて...」

『夜、スープとっても美味しいです！』

「本当美味しいわ、夜。今夜は冷えるし、温かいスープが最高ね」

「えへへ...二人とも、ほめてくれてありがとう...」

Aとラヘルから褒められ、夜は照れたような表情を見せた。

『ラヘルと夜は、素敵な恋人同士ですね！』

「恋人！？ち、ちがうわ、ちがうわよA！何か大きな誤解をしているわ！」

『え、違うの？私てっきり...』

「違うわ！私と夜はその、家族で、友人で...」

「ねぇ、ラヘル恋人ってどういう...？A、僕にも教えて！」

「あぁもうこの話は終わりよ！」

真っ赤な顔をしたラヘルと、きょとんとした夜が可愛い。私はてっきり、恋人同士だと思っていたが、違ったようだ。

でも二人は、お互い大切な存在のように見える。

家族とは違うけれど、自分の知っている世界とは異なる世界で温かい食卓を囲めた。なんだか懐かしい...。この世界が自分の知っている世界で無くても"ここにいていいよ"と言ってくれる二人の傍に居たいな、と漠然と思った。