異世界から"運命の人"として召喚された運命にあらがう為、塔を登ります。 (ページ3)

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この世界に落とされた日2 ページ3

『おかあさん、お父さんとうしたんだろ...見に行かなくて、いいの...？』

私がお母さんに尋ねても、返答は帰ってこない。
代わりに震える手でぎゅっと腕を握られて、これ以上聞けるわけがない。

そんな私達を見て、弟が手を振り払った。

「そんなに心配なら俺が父さんの事見てくるよ。」

お母さんの制止を振り払って玄関まで弟は走っていった。だめ、止めなきゃ。逃げなさいって言われたのに...追いかけなきゃいけないはずなのに、体は言う事を聞かず震えている。

「A」

お母さんに声を掛けられ、ハッとする。

「ごめんね、お母さん、父さん達が心配だから、ちょっと様子見てくるわね。Aだけ先に、勝手口から逃げてお隣さんに知らせて。いいね？」

『やだ、私ひとりだけ逃げるなんて…！私も一緒に行く！』

「こんな時くらいお母さんのいう事、聞きなさい。お願い。」

今までこんな表情を見たことがない。
感じた事のない嫌な予感が背中を伝う。ここで母を1人にしたら絶対だめだって分かっているのに、愚かな私は恐怖に支配されていた。

「行きなさい！」

お母さんに言われて、足がビックリして動き出す。
こっちへ向かってくる足音があったけど、お母さんはその足音の方へ向かっていった。その意味をなんとなく理解しつつ私は泣きながら、お風呂横の勝手口へ向かった。

裏口へ立った時、足が動かなくなった。

足を進めようとすると、家族の顔が思い浮かんで自分だけなんて逃げられなかった。

気づいた時には引き返して、足が勝手に動いていた。

『お母さん...お父さん...？』

皆で最後に過ごしたダイニングへ行くと、後ろから音がした。振り返って弟の名前を呼ぼうとすると、お腹に熱い衝撃が走って私は倒れた。

お腹があつくて耐えられない程痛い。

泣きながら周りを見回すと、刺し傷と血にまみれたの家族が横たわっていた。

「俺はやりました！与えられた任務を遂行した...やり切ったんだ....！！」

『おか..さ...』

知らない男が包丁を持って何かを叫んでいる。
お母さんはまだぎりぎり意識があるみたいで、こちらをみながら泣いていた。

「なんで...A...にげなさ、いって...」

『ごめん、おかあさ、ごめんなさい...私だけ逃げるなんて...できなかった』

ごめんなさい、大好き、ご飯おいしかった、いつもありがとう、大好き

伝えたい言葉はたくさんあったけど、それを伝える間もなく私の視界は真っ黒になった。