異世界から"運命の人"として召喚された運命にあらがう為、塔を登ります。 (ページ16)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:5,756 hit

出会いのち別れ9 ラヘル視点ページ16

Aが居なくなった。

居なくなる直前、すごく微かな声だけど私を呼ぶような声がして近づいた。
そこには光に包まれた彼女と、大きな扉が見えた。

そうか、彼女はやっぱり特別だったんだ。

だから自分がいるべき場所へ戻っていった。それだけの事なのかもしれない。けれど、何故かこの胸がじくじくと痛む。

どうして私から離れていくの、ずっと一緒って言ったのに！
どうしてどうしてどうして....私の大切なものを盗んでいくの...

「A.....」

その時、ふと童話を思い出した。よく夜にも読み聞かせてあげたあの童話。石を積み上げて、大好きな星と一緒に暮らそうとした人の話。

最初は愚かだと笑ったけれど、今ならあの人の気持ちがなんとなくわかるような気がする。

「そうね。自分にとっての星と、女神がそこにあるのならば、自分から行くしかないもの。」

こんな醜い自分も、彼女の傍に行けば、彼女と星を見に行ければ何か変わるような気がした。

「待ってて...A......私もすぐ特別になって、貴方を迎えに行くわ...」

この時既に私は、夜を中心にではなく、自分の欲望を中心に行動していた。誰にも言わず、自分の悲願を叶えるべく動いていた。

ここから約10日ほど経過した後、私は夜を置いて塔を登り始めた。