異世界から"運命の人"として召喚された運命にあらがう為、塔を登ります。 (ページ11)

今日:2 hit、昨日:10 hit、合計:5,766 hit

出会いのち別れ5 ページ11

ここへ来る頃には鎖骨辺りだった髪も少し伸びて肩甲骨へ掛かる位の長さになっていた。
どれだけ時間が経過しても、誰かが迎えに来てくれたり、帰るためのヒントが手に入るようなことは無かった。

でも、その間ラヘルと夜はずっと私の傍に居てくれた。うまく食事も用意できず、足手まといになってばかりだったのに追い出さず一緒に居させてくれた。そんな2人に甘えっぱなしじゃなく、恩返しが出来たら良いけれど...。

『ぁ...髪...』

昔、母の日にハンドメイドで組紐をプレゼントした事を思い出した。ブレスレットのつもりでプレゼントしたが、中にゴムを入れていた為母は髪を結ぶ用として使用していた。ラヘルも髪が長いし、私とお揃いで...夜にはブレスレット、もしくは少し長くして首から下げられるようにすれば...よし！

「あら、どうしたのA？そんなに張り切って」

笑いながらラヘルが背中から抱き着いてくる。最近は少しずつこういったスキンシップが増えてきたように思う。これも女の子同士、打ち解けてきたという事であれば嬉しい...。

『ふふ、ラヘルにはまだ内緒です』

「....そうなのね、なら仕方ないわ。ちなみに、それは夜には教えられるものなのかしら。」

肩に回っているラヘルの力が少し強まったように感じた。

顔を覗き見ると、瞳も心なしか私ではなく思考に浸っているような色をしていた。

最近、たまにこういう時がある。

やっぱり、ラヘルにとって夜は大切な存在みたいだし、ぽっとでの私と仲良くしているのを見るとあまり気持ちがよくないのかもしれないな...

『...ラヘルにも、夜にもまだ内緒です。でも、必ずお2人にもお話しますね！きっとびっくりしちゃいますから！』

へへ、と笑いかけるとラヘルは一瞬きょとんとした表情を見せた後、目尻を緩めて私の肩口に額を押しやった。

「うん、Aが教えてくれるのを楽しみにしてるわね...」

『はい！..あ、あのラヘル、一つ相談なのですがこの辺に糸...もしくは麻等の原料になる様なものはないでしょうか？』

「そうね...糸となると少し高価だし、服を解いても良いけど...麻に似た草なら、近くの洞窟にあったはずよ」

『そうなんですね...ありがとうございます！』

服を解いてもらうのは申し訳ないし、この際糸から作っちゃおう。近くの洞窟なら、私1人でもいける距離だ。染色等の課題もあるが、まずは明日原料を取りに行こうと密かに胸に誓った。