45話 ページ45
sha.side
「訓練を、つけて欲しいんです」
「……は?」
何を言われるのやらと、ワクワクと上がっていた気分が一気に下がったのがわかる。気分と同じような上がっていた肩もガクン、と下がる。
これで復讐に協力しろ、なんて言われでもしたらそれなりに面白かったのに。
なんや、つまらん。
「あんたみたいな令嬢がなんで訓練つける必要があんねん。レイカちゃんみたいに襲われることやってそんなにないや、ろ……」
そこまで言って、言葉に詰まる。
そうだ、忘れていた。確かにレイカは最上位の貴族で狙われることも多いからと訓練をつけているけれど、今目の前に居る彼女も、ついこの間襲われたばかりだと言うことに。
しかも、彼女に至っては両親を殺されている。それと同時に彼女も狙われたのだ。またいつ狙われたっておかしくはない。
「……やり遂げたい、ことがあるんです」
言葉に詰まった俺を気遣うように、彼女はそう言って笑った。何を、とは言わない。
「せやったら、ショッピくんに頼めばええやろ。……ああ、アイツがレイカちゃんに付きっきりやから俺んとこ来たん?アンタも、必死やな」
アンタも、そう言った意味は俺にもわからない。いや、わかろうとしていないだけなのか。
彼女以外に誰が必死だと言うのか。その答えは、考えるだけで嫌になりそうだ。
「レイカちゃんにショッピくん盗られて悔しいんやろ。そんなことして気引いたってなんの意味もあらへんわ。結局アンタはレイカちゃんには勝てへんよ」
言うな、言うな、言うな。
それ以上言ってはいけない。分かっているけど、止められない。
彼女が俺に何をした訳でもない、ただショッピの婚約者という、ただそれだけ。
次から次へと出てくる言葉は、止められない。
どうせこんなことを言ったって、後で後悔するだけなのに。ショッピの気持ちが何をしたって彼女に向かないことぐらい、彼女だって、いや、彼女の方がずっと分かっているはずなのに。
時々、城内や誰かの護衛として足を運んだパーティーの会場で、ショッピと彼女の噂を耳に挟むことがある。その時に聞く彼女への言葉はいつも心無い言葉。きっと彼女の耳にも入っているだろうに、その時の彼女はいつだって笑っている。
ああ、そうか。
俺はきっと、彼女がショッピの婚約者だから嫌な訳では無い。気に入らない訳じゃない。
きっと、彼女が自分よりもずっと強い人であることを、分かっているから。
彼女が羨ましくて仕方がないんだ。
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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時