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1話 ページ1

Aside

突然だが私は成り上がりの貴族の一人娘だ。
……と言っても、私がこの間まで平民だった、とか言う訳ではなく。私が生まれた頃には既に貴族だった。
……が、財力や権力がある訳でもなく、そこからまた上に這い上がった訳もない。
そのまま貴族と平民の間を生きている様なものだ。

だがしかし、驚くべきことに私には婚約者が居る。
しかもかなり上位の貴族の息子で、小さな頃から幹部候補として期待されてきた大物も大物。
その上顔も良くて何でもそつなくこなすオールラウンダーときた。普段はクールな表情が崩れる所がまた良いと噂されている。
貴族の息子にしては珍しく煙草やバイクと言う物を嗜むけれど、それが様になっているのだから何も言えない。

そんな彼は……




「……はあ、」

パタリ、と読んでいた分厚い本を閉じて、大きくため息をついた。傍で書類仕事をしていた専属メイドの心配そうな視線から逃げるように窓の外に視線を向ける。

今日は天気がいいからなのか、いつも室内で行う訓練は外で行われていた。
視線の先には婚約者の先輩であるコネシマ、ゾム、シャオロンと一般兵が訓練する姿。
そして、婚約者であるショッピと、その人から手取り足取り教えを受けているご令嬢、レイカの姿がある。

更に、今居る自室は2階。換気のためにと、窓は開けていている。
つまり、訓練している声は嫌でも、ハッキリ聞こえると言う訳だ。

元々声の大きいコネシマを初めとして、一般兵達の声や、普段はあまり声を張らないゾムやシャオロンの声もよく聞こえてくる。
そしてそれに時々混じる、レイカの可愛らしい声や笑い声。
何よりも、普段私の前では笑ったりすることの無い彼の笑い声が聞こえてくると言うのが1番不快で、私の心を曇らせる原因となっていた。






「……詰まらない」


ポツリと小さく呟いた言葉は窓の外の大きな快晴に溶けこんで消え、胸に小さく抱えた蟠りは彼に届くことは無かった。

2話→



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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時

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