第11話 ページ11
「本、増えたなぁ…。」
休日の朝、たまたま早く起きたので朝食を作って彼を起こしに部屋へ入ったら、真っ先に本棚へと視線が向かった。
これから増えるだろうと彼に買った本棚は、それはもう役に立っているようで、部屋の壁際で堂々と本を飾り立てていた。
本は絵本から小難しそうな物まで、色々なものがあってそのどれもが私が買い与えたものなんだなと考えると、なんだか感慨深い気持ちだ。
「と、アルハイゼンを起こしにきたんだった…。」
彼の部屋に来た目的を忘れそうになったが、このままではせっかく作った朝食が冷めてしまうと、彼の体を覆ってモッコリと布団が膨らんでいるベットに近づく。
「アルハイゼン、おはよう、朝食作ったから一緒に食べよう。」
軽く彼の体を揺すって声をかけると、彼は存外すぐに目を開けて、寝起きの掠れた声でおはよう。と零した。
「……ひょわ、寝起きのアルハイゼン、何回見ても良い……じゃなくて、パン焼いたけど、ジャム乗せる？乗せるとしたら何が良いかな。」
「………ぶるー…べりーのものを…頼む…。」
「うん、分かった。ふふ、ゆっくりでいいよ。」
「…いや、起きる。…君が朝食を作ってくれたからな。」
「ぐっ…愛しい…。それじゃあ準備して待ってるね。」
「うん…。」
寝起きぽやぽやの無防備な顔で、可愛いことを言われると、朝から舞い上がっちゃうので勘弁して欲しいものだ。
私が彼からパンに塗るジャムのリクエストを聞いて部屋を出ようとすると、彼も布団から出る気になったのかのっそりと布団から出てきて私の後を着いてくる。
ぼさぁ…と芸術的な寝癖をこさえながら洗面台に姿を消した彼を見送ってキッチンに向かうと、冷蔵庫からブルーベリージャムを取り出して彼のパンに塗った。
コトリと皿を机に置いて席に座ると、寝癖を直して、すっかりと開いた目をこちらに向けて彼が近づいてくる。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
