第15話 ページ15
「わ、凄い。この宝石綺麗。」
「お!お嬢さん!お目が高いね!その宝石は稲妻では翡翠って呼ばれるもので、こっちではジェイドって名前があるんだよ。」
シティに着いて早速、商人が開いている宝石店に目が引かれて、そこに置いてある緑を手に取って、その美しさに思わず声が漏れる。
それを聞き取った商人が、ニコニコ笑顔でこの宝石に着いて喋ってくれる。商人の話はとても面白いもので、ついつい聞き入ってしまう。
「どうだい、この宝石貰ってくれたりするかい?」
ひとしきり話し終えて満足気に笑う商人がそう問うてくる。私はう〜ん。と頭を悩ませた。
「…私が持ってても、この魅力的な宝石を腐らせるだけな気がするんですよね…。」
「そんなことは無いさ。こうやって、俺の話を聞いて、愛しそうな目で宝石を見つめるお嬢さんが、この宝石を無碍にするなんて、俺には考えられねぇけどなぁ。」
「そうですか…?もう、本当に口が上手ですね商人さんは!じゃあこの宝石、ください。」
「喜んで!」
「買ってしまった…。」
はぁとため息を着くと、右手に持っている宝石を眺めた。太陽に照らされ、キラキラと優しく緑に光るそれはとても綺麗で、まぁ後悔は正直していなかった。
この宝石、どうしよう。どこに置こうか…。
そんなことを考えながらプスパカフェの前で彼を待っていると、遠くから見慣れた緑がこちらへ歩いてくるのが見えた。
「アルハイゼン久しぶり。元気にしてた?」
「あぁ久しぶり。そこそこと言ったところだ。」
彼はその長い足で素早く私の目の前に立つと腕を組んで、私の挨拶に返事をした。
「随分早いな。」
「まぁね、そういうアルハイゼンもはやいね。まだ約束の時間の20分も前だよ。」
腕に着けている時計を見ると、時計の針は17時40分付近を指している。
「仕事が想定よりも早く終わったから先に来て席でもとっていようと思っていたんだが…。君も早く到着しているから本を読んで待つ必要も無さそうだ。」
そう言うと彼は行くぞと目線で訴えて、入口に歩みを進めた。私はそれに大人しくついて行って、コーヒーのいい香りがするプスパカフェの中に入っていった。
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作者名:やたお | 作成日時:2023年2月13日 16時