40.弛緩* ページ43
『それは言わないでくださいよ…』
「でも、こうやって話せるのは嬉しいです」
にこにこしながら少し俺に近づく。
「岸辺さんはどのへんにいるのですか？」
「あー、俺の右肩に乗ってますよ」
「･･･お嬢様みたいだね」
右肩の方に手を伸ばす。
その手を避けるかのように彼女は体をくねらせる。
『触るな変態』
「触ってはいないさ。それに･･･」
『･･･っ！？逃げろ正輝！！』
――その時だった。
言葉にできない程痛々しい叫び声をあげたのは･･････
右手にはテーザ―銃
そこから飛ばされた針は、俺の脇腹にぐさりと刺さった。
あらゆる感覚が麻痺し、動かそうとしても全く動かない。
「僕も一応理系なのでね、ちょっと作ってみました。でも、威力が強すぎたかな」
『召喚者に手を出すとは納得いかないな。いくら貴方でも赦さない』
「こりゃ面白い」
うずくまり無防備になっている俺を蹴り飛ばした。
「う”うっ･･･」
『なんてことを･･･！』
「君は召喚者が指示しなければ無力だ。痙攣しちゃ詠唱すらできないだろう」
ドン、と後頭部に強く鈍い衝撃が走る
彼女が何か呼びかけているが、脳が言葉を理解しようとしない
視界が黒く塗りつぶされていく
そして、静かに目を閉じた。
*
なんということだ
赦されない、これは赦されない。
北村は乱暴に車に乗せ、人気のない路地を走っている。
「教えて下さい岸辺さん。あの遺書は、僕に対する愛情を書いたものではないのかい」
『誘拐しているのに、過去の遺書について触れるなんて呑気な人ね』
「そうかな？これでも緊張しているんだけどね」
堂々とウイスキーを飲み、罪を重ねている。
『貴方の考察、間違ってはいませんよ』
「そう、なら良かった。あと、君が転校する直前に父親が亡くなっているけど、――それは君が殺したのかい」
フフフッ、と鼻で笑う。
あぁ、こりゃ確信犯だ。流石は私の恩師だ。
「まぁ言いたくはないよね。僕は結局君を救えなかったし」
『あら、救ってくれたじゃない。面談の時に』
「あれは救った内に入るのか？」
『そりゃそうでしょ。殺す決心がついたのだから』
「僕が殺人幇助で捕まっちゃうね」
二人の精神病質者は嗤う、狂ったように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茄子2(プロフ) - 奏葉@TRPG廃さん» 応援ありがとうございます。是非、これからもお読みになっていただけると嬉しいです。 (2016年9月7日 16時) (
レス) id: 227a07cc88 (このIDを非表示/違反報告)
奏葉@TRPG廃(プロフ) - せ、世界観や文章、登場人物のぐじゃぐじゃな心情とか…もう、凄い素敵でした…！本屋さんにある小説くらい迫力があって一気に読み進めてしまいました。更新、是非頑張って下さい！陰ながら応援させて頂きます。 (2016年9月6日 17時) (レス) id: 3ff4ffe414 (このIDを非表示/違反報告)
茄子2(プロフ) - 霧憑 幻さん» ご指摘ありがとうございます。修正しました。 (2016年5月5日 22時) (レス) id: 45bd06207d (このIDを非表示/違反報告)
霧憑 幻(プロフ) - ページ2のほうで、「彼とうまくいってないのかな」でしょうか？「ないなかな」になってます (2016年5月5日 21時) (レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茄子2 | 作成日時：2016年4月22日 20時
