34.通夜 ページ37
そうこうしているうちに、岸辺の通夜の日になった。
蜂ヶ峰はどうなったかって？･･･家族葬とかなんとか言っていたような気がする。
一応学校では蜂ヶ峰の死については触れられていない。
俺含め、ごく一部の関係者以外には知らされているがな。
『あー恥さらしだわほんと。行かなくていいのに』
(そうは言ってもな･･･行かないと不自然だろう)
『そうか？生前何も関わりがないのに？』
確かに関わりはないが、君を見つけたのは俺だからね？
変に疑われても厄介だ
*
家から電車に乗り30分ほどで通夜の会場についた。
同級生や親戚と思われる人が暗い顔をしてちらほら入っていく。
(俺葬式とか初めてなんだが、焼香とかってどうやってやるんだ？)
『棺に向かって投げつけて、罵倒した後に唾かければいい』
(いやいやおかしいでしょ)
『まぁ、親戚のクソババア達のやつを真似すればいいよ』
うーん、そんな雑でいいのか？
とりあえず、受付で香典を渡し中に入った。
『･･･遺体は入っていない、ただの空箱だ』
(何で分かるんだ？)
『もし遺体が入っていたら、ここにいる何人かは吐いているはずだ。あの臭いは耐え難い』
案内され椅子に座っていると、何か違和感を感じた。
親戚と思われる人達はあまり悲しんでいるように見えないのだ。
『ん･･･気付いたか。私はただの疫病神だからな。安心しろ、お前らも殺してやる』
(怖いこと言わないでくれよ･･･)
全く焼香の手順が頭に入ってこない。
――若干諦めかけていたその時、場の雰囲気が一瞬にして変わった。
一人の男が焼香台にゆっくりと向かっていく。
彼は異様だった。
鉛の様な重い冷たさが辺りを包み込み、寒気を伴う。
彼女は目を見開き、凍ったように動かない。
刹那、親戚に座っていた女性の甲高い声が響き渡る。
「いやぁぁああぁぁぁぁぁっ!!」
彼は叫んだ方向をじっと見つめる。
無言で、忌まわしそうに
「何で来たのよ･･･！私の娘を殺したくせにぃっ!!出て行って!!あなたの顔なんて見たくないわ!!」
完全にヒステリックを起こしているようだ。
彼は一礼し、焼香しようとする。
「お願いだから娘を汚さないでっ!帰れ、二度と来るなぁっ!!」
女性は鞄を投げつけ、鬼のような形相で彼に掴みかかろうとした。
流石に他の人たちが止めに入って宥めている。
「……」
終始顔色を変えず、彼は何事もなかったかのように出て行った。
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茄子2(プロフ) - 奏葉@TRPG廃さん» 応援ありがとうございます。是非、これからもお読みになっていただけると嬉しいです。 (2016年9月7日 16時) (
レス) id: 227a07cc88 (このIDを非表示/違反報告)
奏葉@TRPG廃(プロフ) - せ、世界観や文章、登場人物のぐじゃぐじゃな心情とか…もう、凄い素敵でした…！本屋さんにある小説くらい迫力があって一気に読み進めてしまいました。更新、是非頑張って下さい！陰ながら応援させて頂きます。 (2016年9月6日 17時) (レス) id: 3ff4ffe414 (このIDを非表示/違反報告)
茄子2(プロフ) - 霧憑 幻さん» ご指摘ありがとうございます。修正しました。 (2016年5月5日 22時) (レス) id: 45bd06207d (このIDを非表示/違反報告)
霧憑 幻(プロフ) - ページ2のほうで、「彼とうまくいってないのかな」でしょうか？「ないなかな」になってます (2016年5月5日 21時) (レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茄子2 | 作成日時：2016年4月22日 20時
